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【事例】日本マニュファクチャリングサービス株式会社

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※平成28年6月17日に日本マニュファクチャリングサービス株式会社より適時開示されている「持株会社体制への移行検討の開始に関するお知らせ」をもとに情報を整理しています。

内容

持株会社体制への移行の検討開始

開示概要

●平成28年6月17日開催の取締役会において、
平成28年12月開催予定の臨時株主総会の承認
及び関係当局の認可を得ることを前提として、
持株会社体制への移行について検討を開始することを決議。

持株会社体制移行検討の背景

●平成22年7月以降、M&A により、
人材派遣会社から
人材サービス・EMS・電源の3セグメントを有する複合企業体へと変貌を遂げている。

●M&Aの実施以降、
各子会社の自主性を尊重した経営を行ってきた。

●しかし、今後グループが更に成長していくうえで、
・同一顧客における取引口座の整理
・営業ルートの統一化
等、会社の枠組みを超えた事業の再編と
最適なグループ組織体制を再構築することが必要となってきた。

●同時に、製造メーカーとEMSが
クロスボーダー化するような経営環境の激変もあり、
このような背景から、
現在の各企業体が別々に事業計画を作成し実行する形から
グループ一体性を重視した経営を行うことで、
モノづくりの世界に新しい企業価値を提供していくため、
持株会社体制へ移行することについて検討を開始した。

持株会社体制移行の方式

日本マニュファクチャリングサービス株式会社を会社分割の方式により、持株会社と事業会社に分割し、当社グループは持株会社体制へ移行し、当社は引き続き上場を維持することを想定し ております。

今後のスケジュール

●必要な関係当局の許可を得ることを前提として、
平成28年12月(予定)に臨時株主総会を開催し、承認を得たうえで、
平成29年4月1日(予定)に持株会社体制への移行を行う計画。

●会社分割の詳細、持株会社体制移行後の詳細事項等につきましては、
今後の検討を踏まえ、決定次第開示する。

Review

今回の事例は、
「日本マニュファクチャリングサービス㈱」
のホールディングス化検討開始の事例です。

 

同社についての基礎情報として、
同社の平成27年3月期の有価証券報告書で、
概要を確認してみましたが、
「事業の内容」のパートには、
以下の説明がありました。

——————————————
当社グループは、
日本マニュファクチャリングサービス株式会社を母体として、
平成22年7月志摩グループ(株式会社志摩電子工業及び同社の子会社である
香港法人、マレーシア法人、香港法人の製造委託先である中国委託工場)、
平成23年7月TKRグループ(株式会社テーケィアール及び同社の子会社である
国内法人3社、マレーシア法人2社、香港法人2社、中国法人1社)
との経営統合を図り、
平成26年10月にパナソニック株式会社から
一般電源事業譲り受けることにより、
開発・設計・製造・修理という製造業の主要なプロセスに
貢献できる企業集団を形成しております。
——————————————

詳細までは私も確認していませんが、
この内容からわかる同社の状況としては、

・M&Aでグループ規模が拡大してきた
・グループ全体で「開発・設計・製造・修理」という
 製造業の主要なプロセスに貢献できる状況を作っている

といった点です。

 

同社はグループ拡大にあたっては、
「M&A」を多用してきたとのことで、
このあたりは、グループ経営においては、
難しくさせるポイントになるでしょう。
(それも海外の会社であれば、なおさらですが)

 

同社の有価証券報告書の「事業等のリスク」のパートには、
以下のような記載がありました。

————————————————–
当社グループは、今後もM&A、アライアンスも含めた
事業拡大戦略を展開してまいります。

こうした状況下、平成22年7月の志摩グループの買収
平成23年7月のTKRグループとの経営統合
平成26年10月のパナソニックからの一般電源事業の譲り受けにより、
当社単独で進めてきた人材ビジネスを中心とする事業概要とは様変わりしており、
設備投資型の事業を展開するグループ会社を当社グループに収めたことによって、
連結財務諸表においても連結貸借対照表、連結損益計算書ともに
大幅に数値規模が拡大しております。

当社グループは、「neo EMS」の事業戦略コンセプトの下で
人材ビジネスの持つ機動的な人材供給力と設計開発、
基板実装、製品組立といったモノづくり力の融合を図ることを標榜しており、
これらの事業シナジーを極限まで追求しております。

また、設備投資型事業を展開する志摩グループ、
TKRグループ、PSTの経営についても当社本体から取締役を派遣し、
各グループの重要意思決定にも深く関与し、
当社グループとして整合性を保持しながら経営を進めてまいります。

しかしながら、
志摩グループ、TKRグループ、PSTの不測の業績動向や
当社との想定事業シナジーが
当初の目論見どおりにマネジメントできないことも完全には否定できず、
その場合においては、
社グループの業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。
————————————————–

 

事業等のリスクとして
あえて記載していることから考えると、
M&Aによるグループ会社拡大していくなかで、
グループ会社管理をきちんと実施し、
グループシナジーを出していけるようなところまで持っていくことに
相当苦労をされている現状が推測されます。

 

また、今回の開示の中では、
「M&Aの実施以降、各子会社の自主性を尊重した経営を行ってきた」
「現在の各企業体が別々に事業計画を作成し実行している」
という表現がありました。

子会社の自主性を尊重することは、
一見良いことのように思いますが、
これがきちんと成り立つためには、
グループ経営の仕組みをきちんと構築して、
親会社が管理できる体制が整備されていて、
かつグループ全体が一体となっていることが必要です。

このような前提が無いなかでの
「子会社の自主性」は、
グループ全体が逆にバラバラになるリスクの方が
高まりますので。

 

上記のような危機意識を背景に、
今後生き残っていくためには、
連結グループ経営に本気で取り組む必要がある、
という意志の表れとして、
ホールディングス化を検討開始したものと思われます。

 

今回の開示の中には、
以下のようなキーワードがありました。

———————————-
●会社の枠組みを超えた事業の再編
●最適なグループ組織体制の再構築
●グループ一体性を重視した経営
———————————-

どれも重要な論点である一方で、
容易ではない挑戦と言えるでしょう。

 

とくに、M&Aにより拡大していく場合には、
時間を短縮できるメリットはあるものの、
異なる企業文化同士が融合することになるため、
「グループの一体化」という点では、
とても難しい状況に直面するものです。

ただ、だからと言って、
このテーマから目を背けるわけにはいきません。

 

同社の今後の状況をウォッチしてみたいと思います。

★★★★★★★
M&Aの後に、
グループの一体感はイメージできていますか?
★★★★★★★

 

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