もう1つ会社を作りたい
社長であれば、おそらく
「もう1つ会社を作りたい」
と思ったことがあるのではないでしょうか?
会社を立ち上げた頃や創業間もない頃は、
1つの事業に集中して、ひたすら頑張る、
といった状況が続くものです。
その後、金銭的・精神的余裕が生まれてきたり、
いろいろな経験をし、周りの事例も聞くようになると、
経営者として「やりたいこと」が
自然と増えてくるものです。
経営者とは、つねに新たな商売のネタを探し続けるものであり、
「やりたいこと」は無限に思いつきます。
これから起業する方であればハードルが高いことも、
すでに起業経験が社長の場合は、
新たなことにチャレンジするハードルが下がっています。
そして、新しいことを始める際や実際に始めた後に
考えることがあります。
「1つの会社の中で複数のことを管理するのが難しい」
「1つの会社の中で違う種の事業をやると、
対外的に説明が難しくなる」
「もう1つ別の会社を作って新規事業をやればよいのでは?」
「他社とコラボして新規事業のために別会社を作りたい」
なかには「節税のためにもう1つ会社を作れないか」と
考える社長もいるかもしれません。

このように考え始めたときに、
役員はどうするのか?
株主はどうしようか?
等々いろいろと考えるようになるものです。
経営者とは、事業成長とともに
やりたいこと、やれることが自然と増えるため、
「もう1つ会社を作りたい」
と思うようになったのであれば、
とりあえず会社をもう1つ作ってみると良いと思います。
現実的には会社をもう1つ作っても
思い通りにいかない事例は多くあります。
それでも、やってみてわかることや
経験できることもあります。
昔より会社を作ることが容易な時代にもなりました。
但し、複数会社を考える際には、
いろいろな手法や形があります。
このデザイン次第で、その後の展開に影響が生じたり、
税金的な有利・不利が生じたりします。
そのため、最初の「デザイン」がとても重要です。
デザイン通り上手くいかない場合も正直あると思います。
それでも、そのリスクヘッジも含めデザインしておくことで、
その後の展開が楽になります。
まずは、社長自らが
複数会社にした場合の「絵(理想形)」を
紙に実際に描いてみてください。
その際には、
「最初の現実的な絵」
「最終的な理想形の絵」
の2つを描いてみてください。
将来像を想定したデザインをしておくことが、
とても重要ですので。
やりたいことを見える化していますか?
解説動画
スライド解説















考察|複数会社化による価値創造の設計図
1. はじめに:グループ経営移行の戦略的意義
企業が創業期の混沌を抜け、単一事業での地盤を固めたとき、経営者の前には「次なるステージ」への扉が現れます。この段階に達した経営者にとって、複数会社経営(グループ経営)への移行は単なる事業拡大の手段ではなく、蓄積された経営資源と「精神的・金銭的余裕」を最大化するための論理的な帰結です。
特筆すべきは、一度ゼロから会社を立ち上げた経営者にとって、二度目の起業や分社化のハードルは、創業時とは比較にならないほど低いという点です。
すでに「成功への道筋」を知っている経営者にとって、新しい器を作ることはリスクではなく、むしろ自身の構想力を解放する「デザイン」の領域へと進化します。今、このタイミングで組織を再定義することは、経営者自身の「やりたいこと」を加速させ、永続的な企業価値を創出するための最も重要な投資となります。
本構想書では、小さな会社がホールディングス化を見据えたグループ経営へ踏み出すための、具体的かつ実践的な設計指針を提示します。
2. 複数会社化を志向する背景と課題の特定
経営者が「もう一つ会社を作りたい」と切望する背景には、現状の1社体制で生じている構造的な限界、すなわち「スピードと専門性のトレードオフ」が存在します。
現在の経営環境において、1つの法人に異種事業を詰め込み続けることは、以下の深刻な停滞を招きます。
1. 管理の複雑性と「意思決定の麻痺」
性質の異なる事業を一律の管理指標で運用することは、現場の混乱を招くだけでなく、経営判断の鈍化を直結させます。「一律のルール」が枷となり、小回りの利くはずの中小企業からスピードという最大の武器を奪うインパクトを与えます。
2. 対外的なブランド毀損と「専門性の希薄化」
「何でも屋」のレッテルは、高単価な専門サービスの提供や、有力なパートナーとのコラボレーションにおいて致命的な障害となります。別法人として「専門性の輪郭」を際立たせない限り、マーケットにおける独自のポジションを確立することは困難です。
3. 創業期とは異なる「心理的障壁の消滅」
初めての起業は暗闇の中を歩くようなものですが、今の社長は「勝ち方」を知っています。二度目の法人は、過去の経験をテンプレートとして活用できるため、より軽快に、かつ戦略的に新規事業を立ち上げることが可能です。この「経験の蓄積」を活かさないことこそが、最大の機会損失と言えます。
分社化の動機が「他社とのコラボレーション」であれ「節税」であれ、それは事業成長の健全なシグナルです。
これらを単なる手続きとして処理するのではなく、グループ全体の「攻め」と「守り」を強化する設計図へと昇華させる必要があります。
3. グループデザインの基本原則:税務・リスク・将来展開
グループ経営において、最もコストがかかり、かつ取り返しのつかない失敗は「最初のデザインの欠如」です。場当たり的に会社を増やすことは、将来の組織再編において莫大な税務コストと時間的損失を生みます。
連結グループ経営コンサルタントの視点から、設計時に死守すべき原則を提示します。
「デザインは防衛策である」という視点
組織デザインの真髄は、実は「攻め」よりも「守り」にあります。新規事業が常に成功するとは限りません。
しかし、適切な分社化と資本関係のデザインが施されていれば、万が一の撤退時にも、そのリスクを当該法人内に「封じ込め」、本業である旗艦会社への波及を物理的に遮断するリスクヘッジが可能となります。
設計のコア・チェックリスト(資本の論理とガバナンス)
後から修正しようとすると指数関数的にコストが跳ね上がるため、以下の項目は初期段階で確定させなければなりません。
• 資本論理の最適化:
役員構成と株主構成を峻別し、オーナーシップを維持しつつ、事業推進の責任をどこに持たせるか。
• 税務上の有利性の検証:
グループ法人税制の適用や、将来の資産承継を見据えた最適な資本金設定および株主持分の設計。
• ホールディングス化への拡張性:
将来的に持株会社体制へ移行する際、既存の構造が「障害」にならないか。
4. グループ将来像の可視化:2つのステップ
描くべきは、単なる組織図ではなく「経営者の意志」です。頭の中にある構想を、まずは「紙に描き出す」ことからすべてが始まります。
この際、以下の二段階のアプローチを同時に行うことが不可欠です。
ステップ1:「最初の現実的な絵」の策定
現在のリソース(ヒト・モノ・カネ)で確実に着手できる、当面の複数会社体制を描きます。
ここでは、直面している「管理の煩雑さ」や「対外的な見え方」を即座に改善するための、実行可能性を最優先した構造を設計します。
ステップ2:「最終的な理想形の絵」の構想
5年、10年後の完成形を描きます。
各事業が自律し、ホールディングス体制によって投資と経営が分離された「究極の姿」です。この「理想形」を先に描くことで、ステップ1の「現実的な選択」が将来の足かせになることを防ぐことができます。
現実と理想のギャップ分析フレームワーク
| 検討要素 | 最初の現実的な絵(現状の打開) | 最終的な理想形の絵(完成形) |
|---|---|---|
| 資本・ガバナンス | 社長兼務によるスモールスタート | 資本と経営の分離・HD体制の確立 |
| 人材・組織 | 既存社員の兼務・多能工化 | プロ経営者の配置と自律型組織 |
| 資金・財務 | 既存事業からの直接支援 | グループ内資金移動の最適化と投資循環 |
| 目的 | 課題解決と新規挑戦の加速 | 永続的な企業価値の最大化 |
5. 結論:持続的な価値創造に向けた第一歩
「もう一つ会社を作りたい」という直感は、経営者が次の成長フェーズに移行するための生存本能です。
今の時代、会社を作る手続き自体は容易になりました。しかし、それを「価値を生む仕組み」にできるかどうかは、経営者がどれだけ緻密に、かつ大胆に将来をデザインできるかにかかっています。
「とりあえずやってみる」という前向きな行動力は、中小企業の経営者にとって最大の美徳です。しかし、その行動を「展開を楽にするための武器」に変えるのが、事前のデザインです。
今すぐ紙を取り出し、自らの手で「二つの絵」を描いてみてください。やりたいことが「見える化」されたとき、グループ経営という新たなステージへの道筋は、もはや迷いのないものとなるはずです。
将来像から逆算された適切なデザインこそが、あなたの会社を永続的な発展へと導く最強の基盤となります。


