オーナー社長の夢?
成長意欲の高いオーナー社長の多くは、
実際に目指すかどうかは別として、
「株式上場」
を夢見ているものです。
決して、
「上場会社>未上場会社」
というわけでは決してないと思いますが、
会社に対する世間の評価は結構単純で、
「上場会社>未上場会社」
と見られてしまうものですし…。
私自身は、
株式上場支援業務をしているなかでは、
「この会社は上場しなければよかったのにな…」
と感じてしまった会社も、正直ありました。
そのため、株式上場が全てではないと思っていますし、
株式上場をしたが故に不幸になる場合もある、
という現実も感じています。
ただ、株式上場を目指すことで、
「失うものもあるけれど、得られるものもそれ以上に多い」
というのも事実だと思いますので、
成長意欲あるのであれば、
一度は目指してみるのも悪くないのではないかな、
とも思っています。
株式上場を目指すことで捨てなければいけないこと
株式上場を目指し始めるときに
オーナー社長として最初に諦めないといけないことは、
何なのでしょうか?
あくまで一般論ですが、
たとえば以下のようなことではないでしょうか?
——————————–
・納税をしっかりすること(←利益を出していく必要があるため)
・会社の財布は個人の財布と別であることを理解すること
——————————–
すでに上場している会社のオーナーが
このような視点を完全にクリアにできているかというと、
そうとは言い切れない面もあるとは思いますが…、
少なくとも未上場の時代に比べると、
間違いなく、このような視点を意識していますし、
出来る限り、そのように行動をしていると思います。
プライベートカンパニーから
パブリックカンパニーになるということは、
オーナー社長からすると予想以上に窮屈なものです。
株式上場するということは、
外部の株主(投資家)が多数生まれることを意味します。
このような少数株主の利害を損ねないように
いろいろとルールを守る必要が出てきます。
株式上場する際には、
証券取引所や証券会社で審査が行われますが、
その際には、この辺りはつっこみポイントになります。
いくつかの会社を経営していても
上場に当たりふさわしくない事業や会社は撤退することを
迫られる場面もあると思います。
オーナー個人の利益を優先できないケースも出てきます。
また株式上場した後でも継続的に、
このようなことを証明するために
いろいろな開示が要求されますので気が抜けません。
上場会社としての「品格」も問われることになります。
何か悪いことを起こしたときの批判も大きくなるでしょう。
さらには、上場維持するためのコストも
意外とバカになりません。
株式上場を目指すことで、
当初思っている以上に失うものはあると思います。
このように挙げだすと、
いろいろあると思いますが、
行きつくところは、繰り返しになりますが、
——————————–
・納税をしっかりすること(←利益を出していく必要があるため)
・会社の財布は個人の財布と別であることを理解すること
——————————–
という点に納得できるかどうかに
集約されるような気がします。
この点を諦めることができれば、
あとは株式上場を目指して
会社を成長させていくことに集中していけば、
株式上場は見えてきます。
オーナー社長はやはり金銭的に余裕を持つべき
株式上場に伴い諦めないといけないこととして、
「納税」「会社と個人の財布を分ける」
といったことをお伝えしました。
オーナー社長としては、
きっと窮屈なことだと思います。
オーナー社長の「個人のお金」という点でも、
縛りが増えることとなり、
きっと悩ましい点もあるとは思います。
ただ、私としては、
株式上場を目指すのであれば、オーナー社長には、
「納税」することや「会社と個人の財布を分ける」ことは
受け入れてほしいと思う一方で、
オーナー社長個人としては、
きちんと個人資産を増やすように設計していくべき、
だとも思っています。
オーナー個人がどのような形で、
会社からお金を受け取っていくのが最適なのか、
個人の税金(所得税・相続税)をどのように最適化していくのか、
といった点は戦略的に設計していくべきだということです。
過度な節税は
いろいろな意味でバランスを崩しやすいので、
個人的にはあまりお勧めはいたしませんが、
ルールを守ったうえで、ほどほどの節税をしながら、
中長期視点で個人の税金を最適化していくことは、
オーナー社長の個人資産を守っていくうえでは
とても重要な戦略だと思います。
この点を私が強調したいと思う背景としては、
—————————–
オーナー社長の金銭的余裕の有無は、
会社経営に大きく影響する
—————————–
と考えるからです。
私の経験上、
オーナー社長個人の「余裕」が無いが故に、
親族内で問題になったり、
会社経営のなかで近視眼的な経営判断をしたり、
社内の雰囲気が悪くなったり、
といった状況を見る機会が多くありました。
ここでいう「余裕」には、
・精神的余裕
・金銭的余裕
に分けられますが、
「金銭的余裕が無いと、精神的余裕につながらない」
と感じさせられるケースが多いと感じています。
このような場面を見てくるにつれて、
オーナー社長の個人資産をきちんと増やして、
どのように守っていくべきかは、
オーナー個人の問題という範疇で収まるものではなく、
会社全体の問題でもある、
という思いが私の中でも強くなってきました。
そう考えると、
オーナー自身の「税金」や「資産管理会社」の問題は、
会社が株式上場を目指す際においても、
重要なテーマである、ということです。
株式上場とグループ経営
最後に、
株式上場とグループ経営の関係についてお伝えして
今回は終わりにしたいと思います。
まず、株式上場をする場合には、
グループとしての「連結決算」が義務になります。
(連結納税は義務ではありません)
グループの親会社が
きちんとグループ会社全体を束ねた決算を作り、
開示していく体制を作っていく必要があります。
そのなかでは、
いろいろと論点も出てきます。
たとえば「連結の範囲」というテーマがあります。
基本的には、
すべてのグループ会社を連結決算に含める必要があり、
業績の悪い会社だけ連結決算の対象から外す、
といったことは基本的にはできません。
当然、海外の子会社も連結決算の対象に含めます。
ここで連結決算の対象に含める
グループ会社の範囲は、ざっくりいうと、
————————–
・50%超の株式保有会社:子会社
・20%以上の株式保有会社:関連会社
————————–
といった感じになります。
そのため、
ある程度の持株比率がある会社については、
グループ会社の定義に入ってきますので、
親会社としてはグループ会社管理の体制を
構築していく必要が出てきます。
また、上場に向けて好ましくない事業やグループ会社は、
株式上場の審査に向けて、
整理していくことも求められるかもしれません。
つまり、
オーナー社長の趣味的な会社をどうするのか?
オーナー社長個人の資産管理会社の位置づけをどうするのか?
といったあたりも整理しながら
グループ経営や連結決算の仕組みを作っていくことになります。
また、連結グループとしての経営予算も作る必要が出てきますし、
グループ全体としての管理体制を整備することが求められます。
そして何より、
このような連結決算やグループ会社管理を行える人材を
社内に確保していく必要があります。
仮に一から育てるにしても
教育のための仕組みを作っておく必要があります。
初めて取り組まれる場合には、
体制や仕組みを構築するのに大変だと思いますが、
グループ全体を見つめ直しながら、
一体となって株式上場を目指していくことは、
グループの経営のレベルを上げるためには
良い機会にもなるのではないでしょうか?