※平成28年10月14日に株式会社エスケーアイより適時開示されている「会社分割による持株会社体制への移行検討及び分割準備会社設立に関するお知らせ」をもとに情報を整理しています。
内容
持株会社体制への移行
開示概要
●平成28年10月14日開催の取締役会において、
平成29年10月1日(予定)に会社分割による持株会社体制へ
移行するための検討に入ること、
及び持株会社体制への移行準備を円滑に進めるため、
分割準備会社として100%出資の子会社を設立することを決議した。
●持株会社体制への移行については、
平成28年12月下旬に開催予定の定時株主総会による承認、
および必要に応じ所管官公庁の許認可が得られることを条件に実施する。
持株会社体制移行の背景
●従来から移動体通信事業をメインとしていたが、
ここ数年で、
・保険代理店事業
・葬祭事業
・再生可能エネルギー事業(太陽光発電事業)
と、新規事業に積極的に取り組んでいる。
●今後も、既存事業での増収増益の継続を目指しつつ、
一方でさらなる新規事業への参入を検討していて、
グループ企業が増加していくことが想定される。
●これらの戦略遂行を一層加速し、
グループが更なる成長を実現していくためには、
各事業領域において環境変化への迅速な対応力を高めるとともに、
グループ全体の企業価値を最大化する経営体制を構築する必要があると考え、
持株会社への移行を検討することとした。
持株会社体制移行の目的
●持株会社への移行を検討する具体的な目的は次の通り。
①グループの経営体制の強化
グループ経営の意思決定と各事業領域における業務執行の分離により、
グループ全体の経営効率の向上を実現させる。
持株会社体制への移行により、
グループ企業の継続的な成長を目的として、
グループ各社による柔軟な組織運営を維持し、
意思決定のスピー ドを高めるとともに、
投資判断・再編を加速させる仕組みを構築することに注力する。
②グループの事業執行体制の強化
各事業会社の継続的な成長を目指すため、
それぞれの責任と権限の下で事業に専念することにより、
事業ごとの専門性・自律性をより高め、
適切な牽制のもとで、より実効性の高い事業執行体制を確立する。
③グループのガバナンス体制の強化
グループ全体の企業価値を向上させるため
適切な牽制のもとでコーポレート・ガバナンスの強化を推進するとともに、
より精度の高い事業計画を策定し、
より中立的な観点での事業評価を行う体制を作る。
持株会社体制への移行方法
具体的な移行スキームや持株会社体制移行後の体制については、
今後検討を重ね、取締役会での決議次第、適時開示する。
持株会社体制への移行スケジュール(予定)
①平成28年11月中旬:持株会社体制移行に関する取締役会決議
②平成28年12月下旬:定時株主総会における持株会社化の承認
③平成29年10月1日:持株会社体制への移行
Review
今回は「エスケーアイ」の事例です
同社の開示内容からは、
事業の「多角化戦略」の意図が、
読み取れます。
そこで、
同社の有価証券報告書(平成27年9月期)の
セグメント情報を確認してみると、
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【移動体通信関連事業】 売上高:約150億円
【太陽光発電事業】 売上高:約0.6億円
【保険代理店事業】 売上高:約12億円
【葬祭事業】 売上高:約6.5億円
【不動産賃貸・管理事業】 売上高:約1億円
—————————————
といった感じになっていました。
このセグメント情報からすると、
事業規模でいうと、移動体通信関連事業が
バリバリのメインであることは確かなようです。
一方で、利益面で見るとどうなっているのでしょうか。
確認をしてみると、
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【移動体通信関連事業】 事業利益:約5.4億円(3.6%)
【太陽光発電事業】 事業利益:約△0.4億円(-)
【保険代理店事業】 事業利益:約2億円(16.3%)
【葬祭事業】 事業利益:約0.4億円(7.1%)
【不動産賃貸・管理事業】 事業利益:約0.1億円(9.4%)
—————————————
といった感じです。
利益規模でいうと、
事業の柱と言える「移動体通信関連事業」の割合が大きいですが、
利益率で言うと、赤字の「太陽光発電事業」を除くと、
「移動体通信関連事業」の率が一番低い状況のようです。
間接費の考え方等もあり、
一概にこの数値情報だけで判断はできないと思いますが、
このような利益効率まで見てみると、
「多角化」のメリットも見えてきます。
単一事業で事業を拡大していくことは、
一定規模までは効率的で生産性の高い状況を
作り上げることができると思います。
一方で、単一事業戦略の場合、
どこかで規模的な面での成長が限界に来たり、
競争激化による利益率低下したり、
単一事業依存によるリスク集中してしまう、
といったデメリットがあることも確かです。
そのため、どうしても、
ある一定規模を超えてくると、
多角化を考えるようになる局面が出てくるものです。
とはいえ、
多角化にもいろいろな方向性があります。
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(A)既存メイン事業を既存顧客へ深めたり、広げていくような多角化
(B)既存顧客に新サービスを提供する多角化
(C)新規顧客に既存サービスを提供する多角化
(D)新規顧客に新規サービスを提供する多角化
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同社の多角化の場合には、
今後可能性のある幅広い事業領域に
多角化していっている印象を受けます。
上記の区分分けで言うと、
(D)タイプ(&(B)タイプ)のように思います。
いわゆる「新規事業」に広げていくタイプの多角化と言えますが、
このようなタイプの多角化の場合には、
各事業が並列する形で経営管理する方法は
合理的な組織デザインと言えます。
そう考えると、
同社が今後目指している
ホールディングス型の経営スタイルの意図が
理解できます。
ホールディングス経営の場合には、
各事業子会社が並列に並び、
それぞれが責任を持って事業遂行していくデザインであるため、
同社のような新規事業拡大型の多角化戦略とは
親和性があると言えるでしょう。
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組織は戦略に従い、
戦略は組織に従う。
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多角化戦略と組織デザイン。
両者を同時に考えていくことは必然なのだと思います。