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【コラム】税金の不思議な力

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憂鬱になってしまう確定申告時期

今年も確定申告時期が始まりました。

私は税理士資格も保有しているということから、
少しだけですが確定申告業務に携わることもあります。

私の場合は、
基本的には法人をお客様としていることから、
確定申告については、
社長や一部の個人事業の方について
ニーズが合う場合のみ対応させていただく、
という程度ですが。

 

ただ、本音を言うと、
この時期は少し憂鬱です。

別に繁忙期シーズンだから
憂鬱というわけではありません。

確定申告時期には、
どうしても「所得税」という
個人のお金に密接に関わる部分のやりとりが
増えてしまうことがあり、
ここが結構憂鬱に感じるのです。

 

当然、仕事なので
好き嫌いというレベルで
業務をするわけではありませんが、
やはり個人のお金に関わる部分のやりとりは、
ナーバスになるものです。

 

納税の必要性は分かっていても、
いったん手元に入ったお金が
懐からお金が出ていくとなると、
多くの方がためらうものです。

当然、私自身についても
同じような感覚はあります。

 

納税した税金の使われ方がもう少し明瞭であったり、
社会貢献につながっていることが明らかであれば、
このような感覚も少しは和らぐのかもしれませんが・・・。

「節税」というキラーワード

世の中には、
「この商品・サービスは節税になりますよ」
といって販売されている商品やサービスも
多くあります。

代表的なものとして、
法人向けの「保険」があったりします。

 

また、
「節税のアドバイスしますよ」
「節税に強いですよ」
と強調している税理士もいます。

 

まさに「節税」は、
商品やサービスを販売する際の
キラーワードと言えるでしょう。
本当に不思議な力を持っている言葉です。

 

ただ、個人的には、
世の中が安易に「節税」というキラーワードに
頼りすぎていると感じます。

確かに、このキラーワードを使えば、
商品やサービスが販売しやすくなるかもしれません。

 

但し、これは麻薬のようなもので、
いったん「節税」ニーズに逃げてしまうと、
なかなか抜け出すことは難しいように思います。

消費者側も、
「その商品・サービス=節税がウリ」
という認識になってしまうと、
商品やサービスの「本質」で勝負をしていくことが、
どんどん難しくなっていくはずです。

これは白?黒?

「これは経費になりますか?」

このご質問も
あらゆる場面で多くいただきます。

 

ルール上、絶対に「黒」というものであれば、
そうお伝えするしかないところですが、
ルールからは明確に判断できないケースも多くあります。

感覚的には「白」ではないけど、
絶対に「黒」とも言い切れない。
いわゆる「グレーゾーン」です。

 

だいたい、
本当に悩むケースというものは、
どこにも答えが書いていないことがほとんどです。

インターネットで探しても、
関連書籍を調べても、
肝心な部分についてはどこにも書いていません。

 

だからこそ、
専門家として頼られるわけで、
そこに存在意義があるのだとは思いますが、
それでも正解を断言するのは、
難しいところです。

 

最初にお聞きしたときには、
絶対「黒」だと思ったとしても、
相手の立場になって考え直してみると、
次第に「絶対に『黒』とは言えないかも・・・」と
思えるようになることもあります。

人それぞれ置かれている立場や
事業に対する考え方、お金に対する考え方、
金銭感覚が様々なので、
一歩下がって考えだすと、
何が正解であるかが分からなくなってくることもあります。

 

結局、同じような事象でも
人によって、立場によって、会社によって、
判断は異なるのではないかと思います。

税金との付き合い方

税金に関することを、
今回はいろいろ勝手に書きましたが、
要するに「税金」というのは、
とても不思議な力を持つ支出である、
ということです。

そして、
考え方次第で、
その納税額の結果も大きく変わってくる、
ということも言えます。

 

私自身、
税理士資格を持っているせいか、
どうしても「税金の専門家」としての立場で
相談を受けることも多いものです。

一方で、
この「税金」と、どのように接していくべきか、
本当に悩ましいところです。

 

私は公認会計士出身ということもあってか、
あまり「節税」というところに興味が湧きません。

どちらかというと、
売上を上げていく、利益を上げていく、
会社の経営管理レベルをあげていく、
というニーズのなかで業務をしてきました。

 

より正確にいうと、
組織が経営戦略の中で、
適切かつ計画的に実施する「節税戦略」といったレベルの話は
とても好きなのですが、
ただ単に「節税したい」というニーズに対しては、
全くモチベーションが湧かない感じです。

そのため、
節税がニーズの入口である案件は、
基本的にお断りしています。

 

そもそも

—————————————–
税金に対する思想は、
税金単独で存在するわけではなく、
人としての価値観や、
企業が経営していくうえでの価値観のなかに
存在するものである
—————————————–

だと思っています。

 

当然、税金に対する基本思想がお互いで異なれば、
先方のニーズを満たすことが難しいと考えています。

 

決して「節税=悪」という思いがあるわけではありません。

適切な経営のなかの適切な節税は
大いに取り組むべきだと思いますし、
そこに対しては極力サポートをしてあげたいと思っています。

但し、そのためには、
やはりニーズの入口は、
「節税」であるべきではない、
と思うのです。

 

そう考えると、本来、
税金の専門家として取り組むべき姿勢は、
単に「節税の手法」を教えるのではなく、

—————————————
経営者自らが、
経営のなかでどのように「税金」を位置づけ、
「税金」とどのように向かい合い、
どのような戦略をとっていくかを自ら考える力
—————————————

を育ててあげられるような支援スタイルなのではないか、
と思うのです。

 

経営者自らが、
この「税金を考える力」を養わない限り、
本当の意味の「節税」は難しいのではないか、
と思います。

 

よく「節税している」お話をお聞きするのですが、
本当に「節税」になっているかが疑わしいケースも多々あります。

いわゆる、本人だけが
「節税になっている」
と思い込んでいるだけで、
実際には節税になっていないケースです。

 

知らないことは幸せなことかもしれませんが、
やはり残念なことです。

経営者自らが
税金の思想と基本的な知識を持ち、
経営における税金の位置づけを自ら考える力があれば、
このような残念な状態には決してならないと思います。

 

これから成長していく経営者には、
「節税=経営の入口」
ではなく、
「節税=適切な経営の1つの結果(出口)」
として考えていただきたいな、
と思う次第です。

 

私自身も、
税金の不思議な力に負けてしまわないように
もっと精進していかなければ。

自戒の念も込めて本日は書いてみました。

★★★★★★★
経営のなかにおいて、
どのように「税金」を
位置づけていますか?
★★★★★★★

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