最近は、
リーマンショック後の不況期から一転、
景気も回復したこともあり、
積極的なM&Aの話を聞く機会が
多くなりました。
一般的に、
景気が悪い時には、
掘り出し物案件を
比較的安くM&Aできる場合があります。
一方で、
景気が良い時には逆に、
案件内容に比して割高な
M&Aになってしまうことが多いです。
そのため、
景気が良い時には我慢をして、
景気が悪い時に、
一気にM&Aに動くという戦略も
賢い考え方だと思いますが、
こればかりは、コントロールが難しいところです。
結局、
そのときどきで、
最適な判断をせざるを得ません。
ただ、この最適な判断は
結構難しいものです。
私の経験上でも、
また一般的に言われているところでも、
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M&Aした結果、
成功する確率の方が低い
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というのは事実だと思っています。
それにもかかわらず、
M&Aで他社を買収するケースは
増える一方です。
それだけ、
M&Aというものは、
魅力的な取引ということなのでしょう。
人間は、
いったんM&Aをしようと考え出すと、
どうしても実行しなければ、
収まりがつかない生き物なのかもしれません。
上場株式相場のように
いつでも、希望の銘柄を購入できるような
マーケットがあるわけではないので、
少しでも魅力的な案件があると、
「今を逃すと・・・」
という気持ちにどうしてもなってくるものです。
検討対象に上がったM&A案件には、
悪い面もあることは頭でわかってはいても、
どうしても良い面の方が
魅力的に見えてしまうものです。
また、経営者であれば、
「自社がM&Aをすれば、
その会社の悪い面についても
きっと解消ができるはず」
といった思いもあるはずです。
というのも、
他社を買収しようとする会社は、
「自社のビジネスに良い成功体験がある」
といった会社のケースが
ほとんどだからです。
とはいえ、
M&Aの結果が
失敗に終わった会社の方が多い、
という事実は事実としてあります。
客観的なデータはありませんが、
どれだけ好意的に見積もっても、
成功確率は5割でしょう。
結局、
自信のある会社がトライをして、
成功する確率が半分以下、
ということです。
失敗する場合の理由にも
いろいろとあると思います。
事前のDD(デューデリジェンス)不足
という理由もあるとは思いますが、
失敗確率を下げるために、
事前に入念なDDを
実施するケースも多いでしょう。
ざっくり考えると、
M&Aが失敗するケースの半分は
事前のDD不足が原因で、
もう半分は、
M&A後のマネジメントの問題
といった感じでしょうか。
それでは、
DD自体は問題なく、
M&A取引が予定通り完了しても、
その後の買収先の経営が
上手くいかないケースも多いのは、
なぜでしょうか?
個人的には、
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グループ経営の
経験値が乏しいため
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ではないかと感じています。
それまで単一会社だった会社が、
いきなり他社を買収して、
はじめてグループ経営を実践した場合には、
失敗確率が高くなるのではないかと思っています。
はじめて子会社を設立したりして、
グループ経営を始める場合ですら、
上手くいくケースの方が少ないのです。
ましてや、
異文化である他社を買収して、
はじめてグループ経営を始めるとなると、
どれだけ優秀な経営者であっても、
より難易度が高いと言えるでしょう。
そのため、
M&Aを成功させるためには、
事前に「グループ経営」の仕組みを構築し、
他社を受け入れられる土壌・基礎を
作っておくべきなのではないか、
と考えています。
グループ経営における「ツボ」を
理解したうえで、
M&Aを実践するケースと、
そうでないケースでは、
大きな違いがあるはずです。
グループ経営を実践することで得られる
成功ノウハウに限らず、失敗ノウハウも、
M&Aには生きてくるはずです。
経営者には、
「M&Aはグループ経営の一環」
として位置付けて、
取り組んでいただきたいと思います。