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Vol.95 結局、ホールディングス移行で良くなったのか?

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上場会社の場合、
「ホールディングス化の目的」
が開示されています。

一方で、
未上場会社の場合は、
正確な実態はわかりません。

未上場会社の場合は、
おそらく「節税」目的による事例も
そこそこあるように推測されます。

私としては、
節税を主目的にした
ホールディングス化の意義には、
あまり興味が無りません。
(副次的なテーマとしては当然重要ですが)

そのため、
参考になるのは、
上場会社の事例の方が多いです。

上場会社の場合は、
節税を主目的として
ホールディングス化する事例は考えづらく、
経営目的であることが通常だからです。

但し、
いろいろな開示資料を確認したり、
ホールディングス化している会社と話をしていると、
疑問に思うことがあります。

Vol.59(1)

それは何かということ、
「結局ホールディングス化して良かったのか?」
ということです。

各社がホールディングス化する際に、
目的として挙げる内容は、
ほとんど同様です。

たとえば、
✓権限委譲による意思決定の迅速化
✓ホールディングカンパニーによるグループ統括管理
✓共通業務の集約
✓M&A等に向けた機動性確保
等といった目的です。

ホールディングス化した会社は、
実際に、このような目的を
達成できているのでしょうか?

Vol.64(4)

実際のところが気になるため、
ホールディングス化した会社に
当初の目的が実現できたかどうかを
聞いたりしたこともあります。

ただ、多くのケースでは、
「良かったのかどうか、わからない」
といったあいまいな回答が多いです。

組織再編の場合、
効果の良し悪しが極端に出ることも多いのですが、
ホールディングス移行の場合には、
「可もなく、不可もなく」
といった結論が多いということです。

これは極論すると、
「実態は何も変わっていない」
と言ってもよいかもしれません。

そもそも
ホールディングス化のニーズは、
業績を直接の目的にするのではなく、
経営管理目的であることが多いです。

さきほど挙げたような
ホールディングス移行の目的例も、
どちらかというと「経営管理」面の要素が強いです。

実は、
この「経営管理」目的というのは、
大義名分は分かりやすいのですが、
「効果を測定しづらい」
というデメリットがあります。

そのため、
多くの会社で
「効果があったかどうか正直わからない」
といった状況になるのだと思います。

Vol.15(3)

但し、
目的達成できたかどうかを
測定しづらいからといって、
「Before ⇔ After」
効果をあいまいにしておくのは
望ましくありません。

どのような結果であれ、
決断をした意思決定が本当に正しかったかどうかの
レビュー(効果測定)をきちんと行うことが、
経営者の大切な仕事です。

それでは、
ホールディングス移行の効果を測定するには、
どうすればよいのでしょうか?

ここでは、
2つの考え方をお伝えしたいと
思います。

Vol.47(3)

それは、
①徹底的に数値化する
②過去事例でシミュレーションする
の2点です。

2つとも、
抽象的になりやすい「目的」を「具体化」する、
というところがポイントです。

 

<①数値化>
まず何と言っても、
目標達成のための王道は、
「数値化」
です。

Vol.17

よく言われることですが、
「If you can’t measure it, you can’t manage it.」
です。

つまり、
「測定できないものは管理できない」
ということです。

そして、
「管理ができなければ、目標も達成できない」
ということになります。

ホールディングス化の目的を
漠然とした表現で終わらせずに、
具体的な数値指標とともに、
明確にしておくことが必要になります。

たとえば、
「権限委譲による意思決定の迅速化」
という目的の場合には、
「これまで1週間かかっていた意思決定が3日になる」
といったようなイメージです。

難しいとは思いますが、
何とか「数値化」「定量化」することに
こだわってください。

 

<②過去シミュレーション>
将来のことをシミュレーションするのは、
難しいものです。

一方で、
過去にすでに起こった実例をもとに、
シミュレーションするのは、
将来のことを予測するよりは容易です。

Vol.27(3)

たとえば、
「M&A等に向けた機動性確保」
という目的の場合のイメージは
どのような感じでしょうか?

イメージとしては、
「今年実施できなかった●社のM&Aは、
もしホールディングス経営にしていれば、
□□さん△△さんの役割が明確になっていて、
積極的な調査のもと●●社を購入できていた」
といった感じでしょうか。

実際の具体例(失敗例)をもとに、
「あのときに、もしホールディングス体制であれば、・・・」
についてシミュレーションをするのです。

具体例をもとにした話は、
関係者間で目的を共有する際にも
理解が深まり効果的です。

 

以上、
2つの考えをお伝えしてみましたが、
いかがでしょうか?

とくにホールディングス化は、
その効果が測りづらいという特性があるので、
やりすぎるくらい「目的の具体化」を
事前に実施しておくことが望まれます。

Vol.59(3)

「目的達成できたかを事後的にレビュー出来るように
なぜホールディングス化するのかを、
事前に具体的にしたうえで、
関係者間で共有する」

このことを是非意識して
ホールディングス化に取り組んでください。

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