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Vol.52 株式上場とプライベートカンパニー

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小さな会社や中小企業の
社長にお会いした際に、
「将来株式上場したいと考えています。」
と、よくお聞きします。

別に株式上場なんて必要ない、
と言われる社長も、
心のどこかでは、
「機会があれば、上場を」
と密かに思われている方も実は多いです。

Vol.52(1)

別に株式上場したからといって、
会社の本質が変わるわけではありませんし、
上場をしたことで変な方向に
向かってしまう会社も実は多くあります。

私もこれまで上場の支援として
関与してきた会社で、
「上場前は良い会社だったのになぁ」
「上場しなければ・・・」
と感じた会社は少なからずあります。

Vol.52(2)

実力のある中小企業の社長のなかには、
「株式上場なんて実力がない会社が行うもの」
という考えを持たれている方もいらっしゃいます。

確かに従来と比べ、
株式上場のハードルも下がり、
小粒な上場会社も増え、
上場のレベルも少し落ちた印象はあります。

それでも、世間では、
「上場会社=優れている会社」
「未上場会社=力の無い中小企業」
といったモノサシを使われることが多いため、
ジレンマを感じる未上場会社の社長もいるはずです。

Vol.52(3)

いろいろな理由はあるにせよ、
やはり「株式上場」というワードは、
社長であれば誰しもが、
なんらかの魅力・夢を感じる不思議なワード
なのだと思います。

そのような株式上場ですが、
実際に上場を目指すかどうかは別として、
「いつでも上場できる会社水準」
にしておくのが良いのではないかと思います。

上場会社が未上場会社と比べて
勝っている点ばかりではありません。

但し、
上場会社は、
市場からの厳しい目や証券会社の上場審査、
監査法人といった外部チェックもあるので、
自然と会社の管理体制が
強くなる環境にあるのも事実です。

Vol.52(4)

そのため、
株式上場にあまり乗り気でない場合であっても、
上場会社に負けないような仕組みを作っておき、
「うちも、いざとなれば、いつでも上場できるんだぞ」
という状況にしておければ、
世間のモノサシに左右されず、
上場会社に負けない会社にしていけるはずです。

実際に株式上場をすると、
目に見えづらいものも含めると、
いろいろな上場維持コストがかかります。

そう考えると、
実際に株式上場をするかどうかは、
メリット・デメリットを総合的に勘案し、
判断する必要がありますが、
いつでも上場できる管理体制を構築しておくだけであれば、
コストを抑えつつ堅実に取り組めるはずですので。

但し、
実際に上場を目指したいと考えるようになったときには、
1つ注意をしていただきたいことがあります。

それは、
「あまり開示をしたくないことまで
開示をせざるを得ない場面が発生する」
ということです。

全てにおいてとは言いませんが、
やはり適時かつ幅広いディスクローズを
求められるのが上場会社の宿命です。

経営上の課題や戦略、採算等、
あまり公にしたくないことも、
ざっくりであっても公表しなければいけない場面もあります。

このようなディスクローズが
経営上のネックになるということで、
上場を止めた上場会社も過去にはあります。

また、
おそらく社長が考えている以上に、
プライベート情報にも神経を使っていく必要性が
高まると思います。

上場する会社とは関係ないと思っていた
プライベートカンパニーの情報も
公表せざるを得ない場面もあるかもしれません。

Vol.52(5)

このようなデメリットも含め、
オーナー自身が受け入れる準備ができれば、
株式上場も悪くはないと思います。

実際には、
日本には実質同族経営が残っている
上場会社も数多くあります。

上場によって外部株主が増えても
多くの株を創業家が握っている上場会社は、
かなりあるのです。

そのような会社は、
創業家のプライベートカンパニー情報も
適切な開示をしながらも、
きちんと業績を伸ばしています。

1つ言えることとしては、
グループ組織のデザイン次第で、
ディスクローズの範囲も異なりますし、
上場後の戦略も変わってくる、
ということです。

そのため、
この「グループ組織デザイン」というものは、
株式上場を目指す際には、
より神経を使って取り組む必要があります。

Vol.27(3)

株式上場というワードだけが
一人歩きするケースも多いですが、
上場に至るまでの「資本政策」という、
目立たないけれど繊細な検討が、
とても重要なテーマになります。

上場を意識し始めたオーナー社長は、
プライベートとパブリックの両立を
目指すためのグループ経営のデザインに
きっちりと取り組んでいきましょう。

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