はじめに

経営者にとっては、
税務面の専門的知識を
細かく理解しておく必要はないと思っています。

とくに専門的な税務の論点については、
社内の経理部やCFOに任せることになると思いますが、
一方で、専門外のことであっても、
経営者という立場であれば、
専門職に完全丸投げするのではなく、
基礎的な税務の考え方について、
知っておくに越したことはありません。

 

私の経験上でも、
魅力的だと感じる一流の経営者は、
どの分野のことでもある程度の基礎知識を
持たれていることが多いです。

 

そこで、
グループ経営者のために、
「グループ経営『税務』」の視点にフォーカスをしたうえで、
いくかのオーソドックスな基礎的な論点について
不定期ではありますが、
今後お伝えしていければと思っております。

今回のテーマは、
「子会社設立に関する費用」
です。

子会社設立費用

グループ経営を実践していく中で、
新たに会社を作ったり、
逆に会社を無くしたり、くっつけたり、
いろいろな場面が生じるものです。

このこと自体は経営者が自由にデザインして、
実行していけばよいと思いますが、
一方で、このような場面でどうしてもついて回るのは、
税務面なケアについてです。

 

そこで、以下に簡単な事例を設けてみました。
とくにひっかけはありませんので、
少し考えてみていただければと思います。

 

<事例1>
・新規事業のための子会社を作る検討する。
・市場動向調査として外部専門機関に調査を依頼し、親会社が100を支払った。
(Q)この場合の100の支払いは親会社の費用としてよいでしょうか?

 

<事例2>
・親会社の事業の一部を分割等して子会社を設立する。
・子会社自らが設立後使用する事務機器をその設立前に事前に購入する。
・子会社設立前なので親会社名義で上記費用(100)を支出をする。
(Q)この場合の100の支払いは親会社の費用としてよいでしょうか?

 

●解答は・・・

いかがでしたでしょうか?
早速ですが、解答は以下の通りです。

<事例1:解答>
親会社の費用としても問題ない。

<事例2:解答>
子会社の費用とするべきである。

以下に簡単に解説を付け加えさせていただきます。

●事例1の解説

法人がその効率化や事業の再構築等を目的として
企業内再編等を行ったり、新規子会社を設立したりする場合に、
一般的には、親会社内において
そのプロジェクト部門を立ち上げたりしながら、
その目的に沿った事前の調査等が行われると思います。

その過程においては、
親会社の部門に属する人員の人件費や
外部に調査等を委託した場合の委託費用等が
発生することが考えられます。

 

そして、その検討プロセスを経て、
子会社設立の「決定」が親会社内で行われると、
本格的な設立準備作業に着手することになっていきます。

そう考えると、
子会社設立に関する調査や検討に要した費用は、

——————————————
親会社自らの事業計画の策定や
事業方針の決定の一環として行われるもの
——————————————

と考えられるため、
グループを統合する親会社自身が負担するのは、
合理的と言えるでしょう。

そのため、
親会社の費用負担として処理しても問題ありません。

●事例2の解説

上記の事例1で見たように、
「子会社の設立準備=親会社が本来行う業務」と認められる場合には
その要した費用を親会社が負担することに合理性があります。

繰り返しになりますが、
ここでのポイントは、

——————————————–
親会社自らの事業計画の策定や
事業方針の決定の一環として行われるものかどうか
——————————————–

という点になってきます。

 

今回の事例2のようなケースについても
このポイントをもとに判断していただきたいと思います。

子会社が設立後速やかに業務開始に至るための
開業準備等に使用するものについての支出ですが、
これは、すでに子会社設立が決定した後の段階の費用ということもあり、
「親会社自らの事業計画の策定や事業方針の決定の一環」
という領域を超えて、
子会社の事業自体に直接関連する支出と考える方が自然です。

 

そのため、
親会社の費用とするよりは、
新設子会社の費用として処理することが
合理的だと思います。

子会社設立前に専ら子会社が使用する事務機器等を
たとえ「親会社名義」で取得した場合であっても、
子会社設立後にこれらの資産を子会社に譲渡するか、
もしくは、親会社ではその取得費用を「立替金」として経理処理した上で
子会社設立後に子会社に請求し、
子会社負担として処理することが適切だと考えられます。

★★★★★★★
その費用は、
親会社の事業の「一環」と言えますか?
★★★★★★★