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【事例】株式会社フェローテック

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※平成28年4月15日に株式会社フェローテックより適時開示されている「会社分割による持株会社体制移行及び子会社新設(分割準備会社)の概要に関するお知らせ」をもとに情報を整理しています。

内容

持株会社体制への移行
分割準備会社の設立

開示概要

●平成28年4月15日開催の取締役会において、
平成29年4月1日(予定)を効力発生日として
・会社分割方式により持株会社体制に移行すること
分割準備会社(100%子会社)を設立すること
の決議を実施。

●会社分割による持株会社体制への移行
及び商号変更については、
平成28年6月開催予定の定時株主総会決議による承認
及び所管官公庁の許認可が得られることを条件に実施。

純粋持株会社体制移行の目的

●グループは、
・装置関連事業
・電子デバイス事業
・太陽電池関連事業
の各セグメント製品をグローバルで製造、販売する
「トランスナショナル・カンパニー」である。

●平成28年4月時点の連結子会社は
27社(国内2社、海外25社)であり、
同社(親会社)は日本での製造・販売を行ってきた。

●子会社に対する出資等は、
同社単体の事業資産の約7割を占めており、
現状は「事業持株会社」的な組織体制となっている。

●経営環境のグローバル化に対応し、
今後の継続的な成長・発展に向け、
持株会社体制に移行する。

●持株会社体制移行の目的は、以下のとおりである。

①グループ戦略機能の強化
純粋持株会社体制に移行することで、
グループ経営戦略の立案機能を強化するとともに、
グループ内の経営資源配分の最適化を図り、
ブランド力の向上を目指す。

②コーポレート・ガバナンスの強化
持株会社における関係会社統括機能を見直し、
グループ全体でのガバナンス体制の強化を図る。

③グループ・シナジーの発揮
持株会社を核に、
グループの持つ人材、製造力、技術力、ノウハウ等を
横展開して活用することでシナジー効果を発揮する。

●会社分割の詳細、持株会社体制移行後の詳細事項等は、
今後決定次第速やかに開示する。

純粋持株会社体制への移行方法

同社を存続会社とする会社分割により、
分割する事業を分割準備会社(100%子会社)に承継させる予定。

会社分割のスケジュール

①分割準備会社設立承認取締役会:平成28年4月15日
②分割準備会社の設立:平成28年5月上旬(予定)
③吸収分割契約承認取締役会:平成28年5月(予定)
④吸収分割契約締結:平成28年5月(予定)
⑤吸収分割契約承認定時株主総会:平成28年6月下旬(予定)
⑥吸収分割の効力発生日:平成29年4月1日(予定)

Review

今回は、
「フェローテック」の事例です

グローバルに展開するメーカーです。

 

基本情報として、
平成27年3月期の有価証券報告書で
グループ業績を確認してみますと、
以下の通りです。

———————————–
・連結売上高:約600億円
・連結経常利益:約20億円
・グループ従業員数:約5,500人
・子会社等:30社
———————————–

特筆すべきところは、
そのほとんどのグループ会社が
「海外法人」だという点です。
まさにグローバルニッチ企業と
言えるかもしれません。

 

また、有価証券報告書の
「対処すべき課題」としては、
以下のような旨の記載がありました。

————————————————–
(A)安定的な収益力の確保財務体質の改善

(B)グループが関連するエレクトロニクス産業及び太陽電池産業では、
市場の需給動向に伴う設備稼働率や設備投資意欲の変動が極めて大きく、
これに対応すること

(C)各産業の需要低迷時に対処するため、
自動車、民生品、光通信分野向けの電子デバイス事業の
3つの事業セグメントを有して事業リスクを分散している。

(D)特に成長著しいパワー半導体向けに同事業の
主力製品であるサーモモジュールの技術を応用した、
銅回路を接合したアルミナ基板を提供しており、
今後、成長が見込めることから経営資源を投入していく。

(E)今後の事業戦略としては、
医療機器・医薬品関連機器、食品加工関連機器など各方面に対し、
コア技術である真空技術や精密加工技術を用いた
エンジニアリング・サービスを提供し、
新たな事業へと育成していく。

(F)技術面では、
中国生産拠点における顧客からの製品認定を取得するため、
品質管理、開発、設計などグループをあげて人的支援を行い、
知的財産に基づく技術開発、生産技術などを移管していく。

(G)製造コスト削減製造拠点の最適化のために
中国内陸部での生産を拡充し、自動化による人件費の抑制、
エネルギーの低減や在庫削減に努め、
経営合理化を継続していく。

(H)グループでは、業務の適正を確保する体制整備に努め、
J-SOXに対応した内部統制システムの運営をグループ各社で実施しており、
適正な財務諸表の作成を保証する体制の強化を目指す。
————————————————–

このような課題に対処していくべく、
ホールディングス化を決定したのだと思います。

 

具体的にホールディングス化の目的としては、

—————————–
①グループ戦略機能の強化
②コーポレート・ガバナンスの強化
③グループ・シナジーの発揮
—————————–

が今回挙げられています。

 

そこで、上記の
「対処すべき課題」で上げられていた
(A)~(H)を上記の目的①~③の
どれに当てはまるかを考えてみました。

すると、以下のように
結構きっちり当てはめができました。

———————————————–
①グループ戦略機能の強化
(A)安定的な収益力の確保と財務体質の改善
(B)環境変化への対応
(C)事業リスク分散
(D)成長分野への経営資源投資
(E)新事業育成

②コーポレート・ガバナンスの強化
(H)グループ内部統制システム強化

③グループ・シナジーの発揮
(F)グループ内人的支援によるグループ内技術移管
(G)製造コスト削減と製造拠点のグループ内最適化
———————————————–

 

上記の対処すべき課題を見ていて感じることは、
同社はグローバル展開が進み、
企業成長のうえでも、またリスク管理のためにも、
「グループ全体を戦略的に経営することが不可欠なステージ」
になっているのだと思います。

また、同社は、
シンジケートローン・コミットメントライン契約により
財務制限条項付きの多額の資金調達をしていることもあり、
「グループ資金を戦略的に活用・運用」
していく必要もありそうです。

 

このような状況の中で、
「グループ経営を専門的に経営する機能」
を作り、明確にすることが
必要になったのではないでしょうか。

事業持株会社体制から
純粋持株会社体制へ移行することで、
グループ経営がどうなっていくのか。
今後もウォッチしていきたいと思います。

★★★★★★★
グループ経営を専門的に
経営する機能を有していますか?
★★★★★★★

 

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