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今週の「減らす」決断(2015年11月2日~11月6日)

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※平成27年11月5日に株式会社セプテーニ・ホールディングスより適時開示されている「モバイルゲーム事業(アクセルマーク)のノンコア事業化及び 連結範囲の変更を伴わない子会社の異動(株式譲渡)に関するお知らせ 」をもとに情報を整理しています。 

はじめに

今週は「セプテーニ・ホールディングス」の事例に特化して、
紹介させていただきます。

いわゆる「選択と集中」を意識した決断です。

事例)株式会社 セプテーニ・ホールディングス

概要

●平成27年11月5日開催の取締役会において、
グループにおけるモバイルゲーム事業の位置づけを「ノンコア事業」とし、
同事業を手がける子会社であるアクセルマーク株式会社の
一部株式を譲渡することを決議。

理由

●グループはこれまで、
事業ポートフォリオを適宜見直しながら成長を続けてきた。

●現在は、収益の柱である主力の「ネットマーケティング事業」、
将来的に高い成長性と収益性が見込まれる「メディアコンテンツ事業」
という2つの事業を手がけている。

●「メディアコンテンツ事業」は主に、
アクセルマークが手がける「モバイルゲーム事業」と
セプテーニ・ホールディングスの100%子会社である
コミックスマート株式会社が手がける「マンガコンテンツ事業」という
事業特性の異なる2つの分野で構成されている。

●このうち平成26年9月期に新規事業として開始した
「マンガコンテンツ事業」は順調に事業開発が進み、
将来の収益化に向けて積極的な先行投資を行っている。

●一方で「モバイルゲーム事業」は事業環境の変化が激しく、
ヒット作を創出し成長を続けていくためには、
以前にも増して機動的な経営体制が求められている。

●このような状況を踏まえ、
現在のグループにとっての最適な事業ポートフォリオを検討した結果、
「ネットマーケティング事業」と「マンガコンテンツ事業」に
経営資源を集中する一方、
「モバイ ルゲーム事業」については、
アクセルマークとの資本関係及び人的関係を見直し、
アクセルマークが従来以上に独立性と自由度を高めて
機動的な経営を行うことが
今後の両社の企業価値最大化につながるとの判断に至った。

●平成28年9月期以降は
同事業を「ノンコア事業」に位置付けることとした。

●今後、アクセルマークに対しては、
経営環境や事業リスクに応じた経営判断を最大限尊重するとともに
ノンコア事業としての業績評価を行うなど、
エンゲージメントを通じた「責任ある投資家」としての
スチュワードシップ責任を果たすべく行動していく。

具体的な手続き

●ノンコア事業化にあたっては、
保有するアクセルマーク株式の一部を売却し、
保有議決権比率を50%未満にする。

●また、セプテーニ・ホールディングス役員と兼務している
アクセルマーク役員(取締役3名、監査役1名)については、
平成27年12月16日開催予定の
アクセルマーク定時株主総会終結の時をもって全員退任し、
その後も新たな役員の兼務はしない。

●これにより、アクセルマークは子会社ではなくなる。

レビュー

今週は「セプテーニ」の特集です。

今回のポイントは、
①コア事業とノンコア事業を明確にする
②ノンコア事業については50%未満の持株比率にする
③ノンコア事業については「責任ある投資家」として関与する
といった点にあると思います。

 

成長し、事業を継続・永続していける会社は、
「変えるべきもの」「変えるべきでないもの」
きっちり意識して経営をしています。

また、そのために
実行すべきものには徹底的に
経営資源を投入する一方で、
中途半端になるものは、
思い切って「捨てる」ことを実施できています。

 

よく、
「戦略=やらないことを決める」
と言われます。

ただ、この「やらないことを決める」ことが
とても難しい決断であり、
多くの会社でも、
なんとなくダラダラ続ける状況が
見受けられます。

 

今回のセプテーニの事例は、
グループ経営の中でも
「コア事業」「ノンコア事業」を明確にしたうえで、
それぞれの対応を使い分けている、
という意味では参考になると思います。

ノンコア事業子会社については、
50%未満の出資比率にしたうえで、
子会社の自由度を高めることの方が、
結果的にグループ全体の企業価値が上がる、
という考えは理解できます。

このようなノンコア事業への関わり方として、
「責任ある投資家(スチュワードシップ責任)」
との表現があります。

この「スチュワードシップ責任」は
最近のトピックですので、
最後に、参考までに概要をお伝えさせていただきます。

スチュワードシップ・コードとは?

●金融庁の下に設置された
「日本版スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」
によって検討会を経て公表された。

●投資顧問や保険会社等の機関投資家に対して,
投資先企業と長期的な価値向上について
話合いを持つことを促す規範(ソフト・ロー)である。

●目的は,機関投資家が,「スチュワードシップ責任」、
つまり、「投資先の日本企業やその事業環境等に関する
深い理解に基づく建設的な「目的を持った対話」(エンゲージメント)などを通じて,
当該企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより,
顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任」を
果たすために有用な諸原則を定めることにあるとされている。

●日本の上場株式に投資する機関投資家が主な対象。

●投資先企業の持続的成長を促し,
顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図るために
以下の7原則が定められている。

<7原則>

①機関投資家は,スチュワードシップ責任を果たすための
明確な方針を策定し,これを公表すべきである。

②機関投資家は,スチュワードシップ責任を果たす上で
管理すべき利益相反について,明確な方針を策定し,
これを公表すべきである。

③機関投資家は,投資先企業の持続的成長に向けて
スチュワードシップ責任を適切に果たすため,
当該企業の状況を的確に把握すべきである。

④機関投資家は,投資先企業との
建設的な「目的を持った対話」を通じて,
投資先企業と認識の共有を図るとともに,
問題の改善に努めるべきである。

⑤機関投資家は,議決権の行使と行使結果の公表について
明確な方針を持つとともに,議決権行使の方針については,
単に形式的な判断基準にとどまるのではなく,
投資先企業の持続的成長に資するものとなるよう工夫すべきである。

⑥機関投資家は,議決権の行使も含め,
スチュワードシップ責任をどのように果たしているのかについて,
原則として,顧客・受益者に対して定期的に報告を行うべきである。

⑦機関投資家は,投資先企業の持続的成長に資するよう,
投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づき,
当該企業との対話やスチュワードシップ活動に伴う判断を
適切に行うための実力を備えるべきである。

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