平成27年8月24日~8月28日の適時開示情報をもとに、
「子会社を減らす」決断をした事例をご紹介いたします。

はじめに

今週は6件の事例をご紹介させていただきます。
「子会社を減らす」という決断は勇気がいるものですが、
経営者として重要な仕事の1つです。

是非、各事例における経営者の決断から
学べる部分を学ばせていただきましょう。

事例1)丸善CHIホールディングス株式会社

●平成27年8月26日開催の取締役会において、
完全子会社である丸善株式会社(「丸善」) と
株式会社雄松堂書店(「雄松堂書店」)の
2社を合併により経営統合(合併)することを決議。

●丸善と雄松堂書店は、
教育・学術関連事業において、
とくに洋書を中心とした書籍販売で
それぞれ高いブランド力を有している。

●丸善は全国の高等教育機関、各種研究機関への
営業ネットワークを強みとしている。

●雄松堂書店は専門性の高い研究者向けコンテンツの
調達力・開発力を強みとしている。

●両社を合併し経営統合することで、
これまで以上に両社の強みを
効果的に発揮できる組織体制を構築し、
両社の主要顧客である教育機関や研究者に、
一層価値あるコンテンツやサービスを提供していく。

●両社が長年培ってきた取引先との関係性
企業文化融合することで、
教育・学術関連事業の一層の拡大を目指す。

事例2)株式会社三ッ星

●平成27年8月26日開催の取締役会において、
海外連結子会社である MITSUBOSHI THAI CO.,LTD.を
解散及び清算することを決議。

●当該子会社は、タイ国において平成22年1月に設立され、
同社のポリマテック事業における
プラスチック押出成形品の製造・販売してきた。

●しかし、経済環境や事業環境の変化により
収益を確保することが難しい状況であり、
事業を継続していくことが非常に困難と判断した。

●子会社貸付金 168 百万円、
子会社所有の事業用資産 38 百万円について、
すでに損失計上済み。

事例3)株式会社アクロディア

●平成27年8月25日開催の取締役会において、
連結子会社である Acrodea Korea, Inc.の
全株式を譲渡することを決議。

●同社グループは、国内及び韓国市場を中心に
スマートフォン向けコンテンツやソリューションを提供。

●韓国連結子会社である Acrodea Korea, Inc.においては、
設立以来、グローバル市場をターゲットに、
韓国の大手電機メーカー等に対し、
携帯電話やスマートフォン向けのミドルウェア等の
開発・提供を実施してきた。

●その後スマートフォン市場の拡大により、
スマートフォン向けのサービス・ソリューションへ業態を移行し、
ソーシャルゲーム等、スマートフォン向けのコンテンツや
SNSプラットフォームの提供による売上拡大を目指してきた。

●Acrodea Korea, Inc. 及び Gimme Corporation は、
業績改善を目指したが、
ゲーム等の課金施策の不調や
SNSサービスの本格展開に向けた調整に時間を要し
顧客獲得施策に遅延が生じたこと等により、
グループ業績計画に達しない状況が継続してきた。

●現状においては早期回復が見込めず、
グループでの事業成長の達成が困難な見通しであり、
財政状況へ与える影響等を勘案した結果、
株式譲渡することとした。

●今後、現在推進している成長見込みの高い分野へ
経営資源をさらに集中させ、
早期に業績の改善を図ることが当社の経営戦略上、重要であると判断。

●取締役報酬を減額する。
・代表取締役社長:役員報酬月額の100%を減額
・取締役副社長:役員報酬月額の80%を減額
・対象期間:平成27年9月から平成28年2月までの6ヶ月間

事例4)ロイヤルホールディングス株式会社

●平成27年8月27日開催の取締役会において、
連結子会社のロイヤルコントラクトサービス株式会社と
セントレスタ株式会社が合併することを決議。

●ロイヤルコントラクトサービス株式会社とセントレスタ株式会社は、
当社セグメントにおいてコントラクト事業に位置付けている。

●両社を合併することにより、
コントラクト事業会社としての事業基盤強化を図り
業界内での競合優位性向上や本部費等の経費削減等を実施することで、
更なる成長を図っていく。

事例5)味の素株式会社

●平成27年8月27日開催の取締役会において、
当社の連結子会社である欧州味の素甘味料社(ASE社)の全株式
オランダのハイエットホールディング社 (HH社)に
譲渡することを決議。

●2014-2016中期経営計画において
“FIT & GROW with Specialty”
(当社ならではのスペシャリティを通じた成長ドライバーの展開と更なる事業構造強化)を
基本方針として掲げている。

●その基本方針の下、
甘味料事業においては「おいしさ」と「低カロリー」の同時提供を目指し、
国内外の消費者向け製品領域の拡大による
事業のスペシャリティ化を推進している。

●一方で、コモディティ製品である
アミノ酸系高甘味度甘味料アスパルテームの
生産体制のあり方について検討してきた。

●1982年に始まった当社アスパルテーム事業は、
現在、当社東海事業所(三重県四日市市)と
フランスのASE社にて生産を行い、
全世界約80の国・地域で販売を行っている。

●アスパルテームのグローバルでの市場規模は、
過去3年間ほぼ横ばいで推移しているが、
2000年以降の相次ぐ新規参入により、販売単価が下落し、
アスパルテーム事業の採算性は悪化する傾向にある。

●昨年、当該事業の構造を強化すべく、
東海事業所にアスパルテームの生産拠点集約することを決め、
ASE社の売却候補先の検討に入った。

●2015年5月にオランダを拠点とする
甘味料等の輸入販売会社のハイエットスイート社(HS社)より正式提案があり、
このたび、ASE社従業員の一定期間の雇用継続などを含め、
売却条件に関し合意が得られ、株式譲渡契約締結の運びとなった。

●HH社は、HS社の兄弟会社で、
今回の株式譲渡に伴い、新規に設立された持株会社です。
今後、アスパルテームの生産拠点集約により
甘味料事業の構造強化を図り、
一層のスペシャリティ化を推進する。

事例6)ジャパンベストレスキューシステム株式会社

●平成27年8月24日開催の取締役会において、
連結子会社である株式会社バイノス(「バイノス」)の
株式を譲渡することを決議。

平成25年2月にバイノスの
株式を取得し子会社化すとともに、
環境メンテナンス事業に進出した。

●バイノスは、主として福島県内において、
東日本大震災の発生に伴い
福島第一原子力発電所から飛散した放射性物質の
除染作業を行ってきた。

●多数の作業員と作業時間を必要とする宅地除染が
当初の想定以上に収支を圧迫した。

●昨年以降は、連結子会社であるJBR Leasing 株式会社(「JBR Leasing」)が
調達した除染作業用特殊車輌の優位性を活かした道路除染にシフトしたが、
東京オリンピックの開催決定に伴う建設・土木関連の人件費高騰の影響等もあり、
収支の改善は思うように進んでいない。

取得当初は「困っている人を助ける」という
経営理念との親和性が高い環境メンテナンス事業に進出することで、
「お困りごと」の対応範囲をさらに拡大していきたいと考えていた。

●しかし、このような状況を踏まえると、
企業価値向上のためには、
不採算子会社の売却が適当であると判断し、
所有するバイノスの全株式を譲渡することを判断した。

レビュー

今週の事例は、
いかがでしたでしょうか?
少しだけレビューをしてみたいと思います。

 

事例1)は、
マルチブランド型のホールディングス
言っても良いかもしれません。

マルチブランドとはいえ、
同業ということもあり、
経営統合した方がシナジー効果を高められる、
という経営判断だと思います。

子会社は増やせばよいというものではなく、
必要に応じて、減らす(統合する)という選択肢も
あることを教えてくれます。

但し、
グループ会社同士とはいえ、
企業文化の異なる会社の統合は容易ではないので、
今後の動向を引き続き注視したいと思います。

 

事例2)事例3)は、
ともに「海外子会社」の撤退になります。

海外進出は、
魅力的である一方で、
撤退事例も後を絶ちません。

事例2)では、
出資金のみならず、貸付金も含め、
どこまで回収できるか不明ですし、
事例3)では、
役員報酬の減額という形で、
責任をとっています。

海外進出時には、
良い面ばかりでなく、リスクヘッジもしたうえで、
ワーストシナリオも意識したうえで、
決断をしていく必要がありそうです。

 

事例4)も、
ホールディングス化での
子会社同士の統合の事例です。

先に挙げた事例1)と同様の
「子会社同士の合併」
です。

同様な事業の会社をくっつけて、
合理化を図っていくというものです。

 

事例5)は海外子会社の売却
の事例になります。

厳しい経営環境の中で、
展開している事業をより生かせる会社へ
売却する事例です。

雇用の継続等の条件面も
意識していることがうかがえます。

ここに「親会社としての責任」を
感じるとることができます。

「減らす」決断をするときには、
ただ子会社を売却すればよいというわけではなく、
働いている社員のことも考慮することが、
親会社としての責務ということでしょう。

 

事例6)についても
多くのことを考えさせられる事例です。

以前に株式を購入して
子会社化した会社を、
今度は譲渡するという内容です。

当初は、
企業理念との親和性が高い事業への進出を
目指し子会社化したようですが、
収支・採算悪化により、
継続を断念したとのことです。

やはり、
ビジネスにおいて「思い」が
重要な要素であることは事実ですが、
利益を生み続けるものでないと、
ビジネスとしては続けていけない、
ということです。

 

今週もいろいろな「減らす」事例がありました。

建設的なものから消極的なものまで
様々ではありますが、
是非グループ経営に当事例を
生かしていただければと思います。

参考記事

Vol.101 グループ企業を「減らす」視点も忘れずに