平成27年9月14日~9月18日の適時開示情報をもとに、
「子会社を減らす」決断をした事例をご紹介いたします。
はじめに
今週は2件の事例をご紹介させていただきます。
「子会社を減らす」という決断は勇気がいるものですが、
経営者として重要な仕事の1つです。
是非、各事例における経営者の決断から
学べる部分を学ばせていただきましょう。
事例1)株式会社アドバネクス
●平成27年9月18日開催の当社取締役会において、
連結子会社である株式会社アドバネクスモーションデザインの
解散および特別清算の申立てを行うことを決議。
●株式会社アドバネクスモーションデザインは、
「携帯電話向けヒンジ事業」において、
企画・開発・販売を推進。
●しかしながら、市場の急激な縮小により、
平成22年3月期以降営業赤字を計上し続け、
平成26年10月1日より事業を停止。
●さらに、同社子会社である
GUANGZHOU STRAWBERRY CORPORATION が、
平成27年1月31日をもって清算結了するなど、
同社の解散を検討する条件が整ってきた。
●このような状況のもと
今般同社の解散および特別清算の申立てを行うことを決議。
事例2)クロスプラス株式会社
●連結子会社株式会社ヴェント・インターナショナルは、
平成27年9月15日開催の取締役会において、
同社の事業の一部を株式会社LIZ LISA及び
株式会社リズリサホールディングスに事業譲渡し、
株式会社ヴェント・インターナショナルは、
平成28年1月31日をもって解散することを決議。
●株式会社ヴェント・インターナショナルは、
ヤング向け人気ブランド「LIZ LISA」の
衣料品・雑貨について企画・製造し、
直営店を中心に販売(「リズリサ事業」)等を実施。
●これまで、ブランド集約を進め、
不採算店舗の退店やMD改革による仕入の見直し、
経費削減等の施策を行ってきた。
●一方、グループの中核である製造卸売事業の
本業回帰による収益基盤の確立を進めてきた。
●このような状況の中で
グループ経営の効率化及び体制の再構築のために、
株式会社ヴェント・インターナショナルのリズリサ事業を
株式会社LIZ LISA及び株式会社リズリサホールディングスに譲渡し、
株式会社ヴェント・インターナショナルを解散することを判断。
レビュー
今週の事例はいかがでしたでしょうか?
少しずつレビューしてみたいと思います。
事例1)は、
連結子会社の清算・解散の事例です。
開示内容には、
「平成22年3月期以降営業赤字を計上し続け、
平成26年10月1日より事業を停止していた」
とありました。
過去の状況を調べてみると、
もともとは上場子会社だったようです。
有価証券報告書をもとに
今回解散することとなった
株式会社アドバネクスモーションデザインの
純資産額(▲は債務超過額)を確認してみたところ、
以下のような感じでした。
・平成19年3月期:3,032百万円
・平成20年3月期:2,094百万円
・平成21年3月期:2,174百万円
・平成22年3月期:1,420百万円
・平成23年3月期:▲371百万円
・平成24年3月期:▲980百万円
・平成25年3月期:▲1,054百万円
・平成26年3月期:▲1,138百万円
・平成27年3月期:▲1,160百万円
10年程度で
40億円以上の純資産が減少しています。
同社の沿革を見ると、
平成8年に
アドバネクス社の社内ベンチャー企業として、
設立された会社とのことです。
社内ベンチャーとしてスタートした子会社が、
株式上場まで果たし、
その後は市場環境の悪化に伴い、
業績が悪化し、最終的には解散、
という流れです。
そう考えると、
最初の10年は成長時期、
後半の10年は厳しい時期
といった感じでしょうか。
歴史のある子会社を解散させるのは
勇気のいることだと思いますが、
事業永続させることの難しさを
感じさせられる事例でした。
事例2)については、
連結子会社の事業を譲渡し、
法人格は解散する例です。
上記の事例1)と同様に、
子会社が債務超過に陥っている事例です。
有価証券報告書を見てみたところ、
株式会社ヴェント・インターナショナルの
純資産(▲は債務超過額)は、
以下のような感じでした。
・平成24年1月期:債務超過ではない
・平成25年1月期:▲1,726百万円
・平成26年1月期:▲3,352百万円
・平成27年1月期:▲5,037百万円
もともとは、
SPA事業モデルの会社である
株式会社ヴェント・インターナショナルを
平成18年に株式を購入し、
子会社化したとのことです。
それから約10年。
事業を撤退するという決断をされています。
その背景としては、
「グループの中核である製造卸売事業の
本業回帰による収益基盤の確立を進めてきた」
と説明されています。
つまり、もともとクロスプラス社は、
「製造卸売事業=本業」
の会社であり、
今回のSPA事業子会社を整理することで、
もともとの強みのある本業に
経営資源を集中させる、ということです。
確かに、
有価証券報告書によると、
クロスプラス社の連結グループ業績は、
ここ数年落ち込んでいるようです。
おそらく、
グループ経営の立て直しのためには、
「原点に戻り、強みのある本業に回帰する」
という選択肢しかない、
という結論に至ったのだと思います。
今回の2つの事例はいかがでしたでしょうか?
いずれの事例も、
事業を多角化し過ぎたわけではなく、
本業の延長線上で
子会社展開をしていたものと思います。
それであっても、
グループシナジーを出して、
成長させていくのは容易ではない、
ということを感じさせられます。
そう考えると、
事業領域を拡大する際には、
シナジー効果含め、
常に状況を見つめ直していく姿勢が大切です。
もし、やむなく撤退せざるを得ない場合においても
手遅れにならないように、
経営判断を下していくことが、
経営者の重要な仕事となります。
参考記事