月次決算
月次決算というと、
どのようなイメージをもたれるでしょうか?
経理周りの業務に近い存在であれば、
すぐにイメージがわく用語ですが、
経理周りから遠ざかるほど、
「なんとなく聞いたことがある」
程度の用語になっているのではないかと思います。
そもそも「月次決算」を実施することは、
法的に義務ではないため、
各社が自由にルールを決めて実施できる
いわゆる「管理会計」の領域になります。
上場会社であれば、
上場前に必ず月次決算体制を整備したり、
月次決算の早期化に取り組むと思いますが、
未上場会社の場合には、
月次決算自体を実施したことが無い会社が多いのも
実情なのではないでしょうか。
これから初めて月次決算を導入しようとする会社
未上場の会社においては、
法的に義務もない月次決算には
興味や関心が無い経営者がいらっしゃるのも事実です。
但し、そのようなステージの会社であっても、
「会社を成長させていきたい」
「会社を拡大していきたい」
「会社を強くしていきたい」
と経営者が考えているステージの場合、
月次決算の趣旨や効果をお伝えすると、
かなり前のめりになって導入を検討されるのも事実です。
月次決算は義務ではないので、
やるだけ時間・コストがかかったり、
煩雑さが増えるという印象が強いのですが、
これは考え方次第だと思っています。
戦略的に月次決算を経営の中に組み込めば、
間違いなく業績にも良い影響がありますし、
実はコスト削減にもつながったりします。
つまり、
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月次決算は「義務」ではないから実施しない、
という考えではなく、
月次決算を「権利」と考え積極的に実施する
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という認識に変えることができれば、
経営に相当な威力を発揮してくれるのが、
「月次決算」というツールなのだと思っています。
すでに月次決算を導入している会社
一方で、
すでに月次決算を淡々と実施している上場会社や
簡易的にも月次決算を導入している未上場の会社においては、
「月次決算」はどのような位置づけに置かれているのでしょうか?
この点についてですが、
会社によってレベル感は様々ではありますが、
「月次決算」との向き合い方という点において、
やや疑問が残る場合があります。
月次決算が通常ルーティング実務として
定着していること自体は素晴らしいことだと思います。
但し、なんとなくのですが、
月次決算がマンネリ化している会社が
多いように感じるのです。
せっかく月次決算という「権利」を実行しているはずなのに、
なんだか「義務」的な感じで実施しているように
感じるケースが多いのです。
月次決算は一部の人だけで義務的に行われている
だたの月次ルーティン作業というレベルに
落ち着いているような印象が強いのです。
(上手く表現できていないかもしれませんが)
個人的な思いとしては、
経営陣を含む全社を積極的に巻き込んで、
「月次決算」を戦略的な位置づけで取り組めば、
もっともっと業務改善に生かすことができたり、
全社員の意識改革・行動管理に役立たすことができるツール
になるものだと思っています。
それにも関わらず、月次決算が、
ただの「義務」的な業務に成り下がっているように
感じる場面が多いことについては、
会計の一専門家という立場としては残念な気持ちです。
月次決算に期待したいことは?
なぜ、今回改めて「月次決算」について
書いてみたくなったのか。
それは、最近、
●「月次決算」の仕組みを初めて作ろうとしている会社
●「月次決算」をすでに普通に実施している会社
の両極端のステージにある会社の「月次決算」の仕組みについて、
支援をする機会がたまたま重なったこともあり、
改めて、私なりに「月次決算」を見つめ直してみたのがきっかけです。
月次決算には
いろいろな特長があると思いますが、
私なりに思いつく要素を3つ挙げてみますと、
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「スピード」×「実行管理」×「組織習慣化」
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の3つの要素です。
これらが意味するところは、以下の通りです。
<スピード>
・現状を数字で「適時」に把握できる
<実行管理>
・実績を定期的に確認することで、
計画が実行されているのかを管理できる
(PDCAサイクルを最低でも月次で回せる)
<組織習慣化>
・月次という一定タイミングで
「締め」という概念を採用することで、
最低でも月1回の「組織習慣」を作れる
これから月次決算の仕組みを
作り上げていく会社を支援する際には、
このような「月次決算の特長」を伝えながら、
それぞれの会社に最適な組織習慣ができるように、
一緒に検討を行います。
経理だけの問題というよりは、
組織全体で「月次決算」を上手く活用することで、
経営者にとって、また、あらゆる立場の社員にとって、
有用な仕組みに仕上げていければという意気込みで臨みます。
初めて「月次決算の仕組み」を作るプロセスは、
多くの社員にとって新しい取組みであるため、
会社にとっても苦労はあると思いますが、
前向きな取り組みとして、
意外と興味を持って取り組んでいただける印象です。
そのため、
これから「月次決算」を導入しよう
というステージの会社を支援する業務は、
新しい取り組みという点では大変な側面はありますが、
私としては、純粋に楽しみながら進めていけます。
「権利」としての月次決算
一方で、私がより悩むのは、
すでに月次決算の仕組みがある会社の方です。
先ほども書いたように、
このようなステージの会社のなかには、
月次決算が「義務」的な位置づけに成り下がり、
なんだかマンネリ化している会社が
少なくないように思っています。
すでに行われている月次決算について
当然良い側面も多くあるのですが、
客観的な視点で見ると、
もっと変えたり、改善してもよいのではないか、
と感じる側面も少なくありません。
但し、このステージの会社は、
経理部もそれなりの社員数も揃っていますし、
社内の組織区分も出来上がっていて、
すでに「ルーティン」が根付いています。
そのため、
このようなステージの会社について、
月次決算を戦略的に活用することによる新たな可能性を
再度ご認識いただき、見直していただくのは、
結構ハードルが高いのです。
このようなステージの会社では、
今ある「月次決算」の仕組みを定期的に見直しながら、
毎月少しずつでも進化させていくことで、
組織全体に大きなプラスの影響を与えることができるはずだと
私は信じているのですが。
すでに出来上がっている現状を変えるのは、
やはり容易ではないですよね・・・。
どうすれば、
このようなステージの会社に、
もう一度「月次決算」の意味や有用性を再発見していただき、
経営の改善・改革に活用いただけるのか?
今は試行錯誤ではありますが、
このテーマについて、
私なりに模索をしているここ最近です。
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「義務」としての月次決算を
「権利」としての月次決算に変えていく
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これから「月次決算」を導入して戦略的に経営を実践しようと
意気込んでいるステージの会社と比較すると、
なんだかもったいない気がしてなりません。