前回の続きです。
「結局、スノーピークは、
『マーケットイン』なの?
それとも『プロダクトアウト』なの?」
これが、
私が感じた「違和感」「矛盾」です。
そして、
ある視点で考えると、
この矛盾が一気にクリアになりました。
その視点とは、
「社員=ユーザー(顧客)」
というものです。
スノーピークの経営の随所に
「社員=ユーザー(顧客)」
であることを前提とした仕組みが
存在することに気づかされます。
たとえば以下のような感じです。
【ミッション・ステートメント】
●「自らもユーザーであるという立場」で考える姿勢が
明示されている。
【採用時】
●「スノーピークやアウトドアが好きでたまらない」
という社員のみを採用している。
【社員教育・研修】
●顧客がきちんと理解するまで
説明できるようになるために、
「キャンプ研修」を義務付け、製品の使い方も
実体験を通じて身につけてもらう。
【製品開発時】
●開発担当者は、企画からデザイン、
製造ラインにのせるまでの一連のプロセスを、
一貫して手掛ける。
●自分のお金を出して買わない製品は作ってはいけない
【働く場所(本社)】
●新潟に本社を移転し、
1年を通して自然を楽しみ、
自然から学ぶイベントを開いて、
多くのユーザー(顧客)が集まってくる。
●本社の目の前は「キャンプフィールド」になっている。
●社員にとってアウトドアが身近なものであり、
日常の延長線上にある
【コミュニティ】
●キャンプイベントを通じて、
顧客と社員がユーザーという同じ立場で
一緒にキャンプを楽しむ。
つまり、端的に表現すると、
「ユーザーを社員として採用して、
ユーザー自身が欲しいと思う製品を作り、
情熱をもって他のユーザーに販売している。」
といった状態が
スノーピークの経営のなかでは、
作り上げられているということです。
このような
「社員=ユーザー(顧客)」
という前提の中では、
「マーケットイン=プロダクトアウト」
という公式が成り立っても
おかしくありません。
自社のサービスに興味がある社員を
採用すること自体は、
多くの会社で実施されていることかもしれませんが、
スノーピークの場合には、
その徹底度合いが異なるように思います。
採用、教育、製造、販売。
経営のあらゆる場面で、
「社員=ユーザー(顧客)」
という視点が貫かれているように思います。
自社の製品・サービスが好き。
↓
自社のことが好き。
↓
自社の製品・サービスのこともよく知っている。
↓
自社で働くことに誇りを持てる。
↓
自社の製品・サービスを自信をもって販売できる。
このようなサイクルが、
企業としての競争優位を
作り上げているのではないかと
感じさせられます。
スノーピークのような製造小売業や、
B to Cビジネスの場合だからこそ、
「社員=ユーザー(顧客)」
が成り立ちやすい環境はあるのかもしれません。
一方で、
B to Bのビジネスの場合には、
なかなか社員自らが自社の顧客になることは
難しい場合が多いです。
但し、
「社員=ユーザー(顧客)」
という基本的な考え方は、
どのようなビジネスモデルであっても
応用できるのではないかと思います。
つまり、
どれだけ社員が「顧客の立場」になれるのか。
この視点だと思います。
ここを追求すれば、
「マーケットイン」「プロダクトアウト」
のどちらかに悩む必要は無くなり、
自然と、
「マーケットイン=プロダクトアウト」
の経営になっていくのではないか。
ということで、
「『マーケットイン』『プロダクトアウト』どちらが正解?」
の問いに対する私なりの回答は、
「『マーケットイン=プロダクトアウト』が
成り立つ経営が目指すべき」
という答えになります。
『スノーピーク「好きなことだけ!」を仕事にする経営』
私にとっては、
いろいろとヒントを得られた1冊でした。