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【事例】株式会社 幸楽苑②(考察)

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幸楽苑がホールディングス経営に移行するということは、
事例として、【事例】幸楽苑①でも紹介しました。

平成27年5月8日に開示された
「持株会社体制への移行に伴う分割準備会社の設立、
吸収分割契約締結及び 定款一部変更(商号及び目的の変更)
に関するお知らせ」
の資料の最後に、
「持株会社体制移行後の組織図イメージ」
が掲載されていました。

組織図というのは、
経営者のマネジメントの意図が表れるものなので、
今後の方向性を知るうえで、
とても有用な情報です。

私も興味深く拝見しましたが、
この組織図イメージを見たときに、
ちょっとした疑問が私の中ではありました。

それは、
「なぜ国内の店舗運営部門だけを子会社へ移管し、
 それ以外はホールディングカンパニーに残すのだろうか?」
というものです。

経営者の意図が半分わかるようで、
半分は分からない、
といった印象を受けました。

もしかしたら、
まだ暫定的なイメージ図だからかもしれません。

とはいえ、
イメージ図を掲載するということは、
今後の方向性をある程度は示していると
考えても良いと思います。

一般的には、
ホールディングス経営に移行する場合には、
子会社の方へ大胆に事業を移すケースが多いです。

この組織図イメージによると、
幸楽苑の場合には、
店舗の運営を多店舗で実施していくという、
比較的シンプルな事業構造とはいえ、
かなりの部門がホールディングカンパニーに
残るようなイメージです。

ホールディングカンパニーは
子会社の株式を保有するだけでなく、
グループ経営の頭脳として、
重要な企画・実行支援部門も置き、
グループを引っ張っていくことが重要な役割だと
私は考えています。

その意味では、
幸楽苑の組織図においても、
ホールディングカンパニーは、
そのような役割を担っていることが見受けられます。

とはいえ、
ホールディングカンパニーに
多くの機能が残っているため、
「ホールディングカンパニーの機能が少し重すぎるのでは?」
と感じました。

極論すると、
「ホールディングス経営に移行しなくてもよかったのでは?」
とも言えるかもしれません。

その意図がどこにあるかは、
当然私にはわかりませんが、
何らかの理由で、
店舗運営部門を分社化する必要性を
感じていたのだと思います。

また、
商品部関連の部門は、
すべてホールディングカンパニーに
残しているのも特徴的です。

たとえば、
商品部門も分社化するという道も
あったとは思います。

それでも、
ホールディングカンパニーに
この商品部機能を残しているということは、
経営者としては、
商品力こそ幸楽苑の経営の根幹である、
と考えているのではないかと感じました。

そして、
今回の組織図イメージ図から、
もう1つ読み取れるとしたら、
「店舗の自立・成長」
という視点です。

組織図イメージでは、
これまで1つの会社で運営していた
「商品開発・製造・購入」という機能と
「店舗運営・販売」という機能が
別会社になります。

また、
「経理・総務」といった管理機能も
「店舗運営・販売」という機能とは切り離され、
別会社になります。

ということは、
事業子会社である店舗運営部門は、
ホールディングカンパニーから、
・食材を購入する
・管理事務を委託する
といったことを、
実際にお金を払って実施する必要があります。

ホールディングカンパニーは
グループ会社とはいえ、
お金を受払が発生するということは、
店舗運営する事業子会社としては、
これまで以上に、
採算管理や社内管理を自分事として捉え、
実施していく必要が生じます。

つまり、
「自立」せざるを得ない環境になった、
ということです。

多店舗展開をしている会社では、
売上高管理や人財管理については、
店舗で主体的に実施するケースは多いですが、
それ以外の業務については他人ごとになってしまう、
といった風土をよく見かけます。

幸楽苑がどのような組織風土、店舗風土であるかは
私にはわかりませんが、
もしかしたら店舗運営側の意識向上を
大きな目的にしているのかもしれません。

また、同時期に、
代表取締役副社長の退任と、
代表取締役社長の長男の
常務取締役への昇進についても
開示がされていました。

代変わりの一環で
組織構造の変化も起きているのかもしれません。

いずれにしても、
今後の業績数値や会社情報を
ウォッチしていきたいと思います。

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