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Vol.60 グループ経営者に必要な「引く」の視点

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連結決算の仕組みの中では、
最終的には連結決算書というものが
出来上がります。

この連結決算書を作成するまでのなかで、
社長としては、
いろいろと見えてくるものがあります。

Vol.35(1)

ちなみに、
連結決算書作成の概要については、
【用語】連結決算①
【用語】連結決算②
に記載していますので、
そちらもご確認いただければと思います。
(とても簡単な要素のみ解説しています)

連結決算の基本概念としては、
これまでも何度かお伝えしていますが、
「足して引く」
です。

連結決算の仕組みを作る際には、
常にこの視点を思い出していただきたいと思います。

つまり、
●足す⇒グループ会社をいったん全て合算する
●引く⇒グループ内取引は消去する
ということです。

考え方としては、
「連結グループ全体が、もし1つの会社だったら」
という前提で決算書を作るのが、
連結決算書です。

Vol.10

たとえば、
1つの会社のなかで、
商品を移動しただけでは、
売上を計上したりはしないと思います。

商品部門と販売部門があった場合、
販売するために
商品部門から販売部門へ商品を移動しても、
ただの「社内移動」です。

これが、たとえば、
商品部門と販売部門を別会社として
グループ会社にした場合は、
商品を移動する行為は、
「社内移動」ではなくなります。

言うなれば「グループ内移動」です。

この場合、
グループ会社とはいえ、
1つの法人(A社)から別の法人(B社)への
商品の移動になるため、
A社で売上が計上され、
B社で仕入が計上されることになります。

ここまでは、通常の考え方です。

一方で、
これが「連結決算」となると、
考え方が変わってきます。

Vol.6

連結決算の仕組みにおいては、
「連結グループ全体が、もし1つの会社だったら」
という前提でものごとを考えます。

そのため、
グループ会社であるA社とB社の間で
計上される売上と仕入は、
連結決算のなかでは、
「社内移動」
と同様にみなされます。

したがって、
グループ会社である両社間で計上されている
売上と仕入は取り消されるのです。

もう一度お伝えします。

連結決算の基本概念としては、
「足して引く」
です。

つまり、
A社とB社の業績をまずは合算するのですが、
そのうえで、
グループ内の取引については消去することになるのです。

Vol.60(1)

結局、
どれだけグループ内で取引を増やしても、
最終的にグループ外の顧客に
サービスや商品を提供しなければ、
グループ内にお金は入ってきません。

グループ会社間でお金のやりとりをしても、
本質的な顧客創造にはなっていません。

ただの複数会社経営では、
このような視点がどうしても欠落しがちです。

一方で、
グループ全体としての企業価値向上を目指す
連結グループ経営を実践していく際には、
グループ全体がベストになるような視点
つまり、グループ最適になるように
経営を実践していくことになります。

そして、
グループ最適を目指すには、
「連結決算の視点」
「連結決算の仕組み」
が不可欠といえるでしょう。

ただ複数の会社を経営しているだけの社長の視点は、
「足す」だけになりがちです

Vol.60(2)

一方で、
連結グループ経営を実践していける社長の視点は、
「足して引く」になります。

Vol.60(3)

この「引く」の部分を考えて
複数会社の経営をできるかどうかが、
グループとして成長していけるかどうかの
分けれ目と言えるでしょう。

連結決算の仕組みを作っていく過程で、
社長からは、
「なぜ、こんなに連結売上高が小さくなるのか?」
「もっとグループ売上高は大きいはずだ」
という質問を受けることがあります。

これまで「足す」の視点だけしか考えていなかった社長には、
最初は「引く」の部分は、少し理解しづらいようです。

それでも、
連結決算の本質を理解していくうちに、
その発言が、
「なぜ、このようなグループ内取引をしているのか?」
「このグループ内取引はムダなのではないか?」
といった感じに変わっていきます。

つまり、
「引く」部分への意識が加わってくるのです。

そして、
「無意味なグループ内取引にエネルギーを使うくらいなら、
グループ外の顧客にエネルギーを使うべき」
といった建設的な方向性に変わってきます。

決してグループ内取引すべてが
不必要というわけではありません。

必要なグループ内取引も当然あります。

連結決算の仕組みを作り、
連結グループ経営をしていくなかで、
本当に必要なグループ内取引かどうかが、
感覚的ではなく、具体的に見えてきます。

Vol.15(3)

これは、
連結決算書という、
具体的な数字をもとに議論がされるからです。

ただの複数会社経営から脱皮して、
連結グループ経営へ移行していくことで、
「生産性の高い複数会社の経営」
になっていくはずです。

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