記事一覧

【事例】株式会社マースエンジニアリング

Pocket

※平成30年2月19日に株式会社マースエンジニアリングより適時開示されている「持株会社体制への移行の検討開始に関するお知らせ」をもとに情報を整理しています。

内容

持株会社体制への移行

開示概要

●平成30年2月19日開催の取締役会において、
平成30年10月1日を目途として持株会社体制へ移行するための検討を
開始することを決議した。

持株会社体制への移行の背景と目的

●昭和49年に創業して以来、
開発型企業として独創的な発想と技術で、
業務の省力化をサポートする製品を提供し、
アミューズメント関連事業を中心とした活動を展開してきた。

●近年ではアミューズメント関連事業で培ってきた技術や
ノウハウを活かした自動認識システム関連事業が成長し、
FA市場、流通市場、健診市場等での販売が進んだ。

●ホテル関連事業では
ホテルやレストランの運営を通して業容を拡大してきた。

●今後、グループが更なる企業価値を高めていくためには、
各事業会社の役割や責任を明確にし、
意思決定の迅速化や機動的な事業運営を強力に推し進めていく
グループ体制を再構築することが必要不可欠であると考える。

●持株会社体制へ移行することにより、
持株会社はM&Aの円滑な実施や経営資源の最適配分を行い、
各事業会社はそれぞれの役割や責任において
事業の拡大や経営人材の育成等を進めていくことで、
持続的な企業価値の向上を図っていけるものと判断し、
持株会社体制への移行について検討を開始することとした。

持株会社体制への移行方法

●具体的な移行方法、移行後の体制、日程等の詳細については、
今後決定次第改めて開示する。

●同社は上場を維持したまま持株会社体制に移行する予定。

     ↓↓↓

その後、平成30年5月14日に公表された
「会社分割による持株会社体制への移行及び定款一部変更(商号及び事業目的等の変更)に関するお知らせ」
において以下のように決定があり。

●平成30年10月1日付で持株会社体制へ移行するべく会社分割(新設分割)を実施し、
同日付で商号を「株式会社マースグループホールディングス」に変更するとともに、
事業目的を持株会社体制に合致したものに変更する旨、決議した。

持株会社体制への移行スケジュール

①新設分割計画承認取締役会:平成30年5月14日
②新設分割計画承認定時株主総会:平成 30 年6月28日(予定)
③新設分割効力発生日:平成30年10月1日(予定)

 

Review

今回は「マースエンジニアリング」の事例です。

ホールディングス化の背景には、
多角化やM&Aによる事業拡大があるようです。
よくあるタイプのホールディングス化と言えるでしょう。

 

今回は、同社のホールディングス化の事例をもとに、
ホールディングス移行スキームについて、
基本的なところを復習も兼ねて書いてみたいと思います。

 

今回の事例ではホールディングス化するにあたって
「新設分割」を選択したようです。

 

一般的に、ホールディングス化するスキームとしては、

—————————————————
①「株式移転」で新規にホールディングカンパニーを上に作る
②「会社分割」で事業を下に移して、親会社自らがホールディングカンパニーになる
—————————————————

の2つがオーソドックスな手法かと思います。

 

未上場会社の場合には、
①の株式移転型の方が採用されがちだと思います。

株式移転自体が、
持株会社を新規に作るのに適した手法ですので。

 

一方で、上場会社の場合には、
②の会社分割方式の方が多く採用されがちです。

大きな理由は、おそらく、
①の株式移転の場合だと「今の上場会社」の上に
新たに新会社としてホールディングカンパニーを作ることになり、
新たにホールディングカンパニーを上場会社に変更するための
手続きが必要になり煩雑だからだと思います。
(テクニカル上場の手続き)

そのため、上場会社の場合には、
今の親会社をホールディングカンパニーに変えて、
事業部門を「下」へ移す会社分割が採用されるのだと思います。

 

なお、「株式移転」とか「会社分割」とか、
少し専門的な感じでわからなくなる場合は、
とりあえず、

————————————
●株式移転=「上」に新しい会社を作る
●会社分割=「下」の会社に事業を移す
————————————

くらいの感じで覚えておいていただければと思います。

 

ただ、会社分割の場合に、
よくセットで作られるのが「分割準備子会社」です。

会社分割に先立って、
分割のための箱となる会社を最初に作っておいて、
その後に、会社分割で、
分割したい事業をこの出来上がった箱となる
分割準備会社へ移行する形です。

 

そもそも、この「分割準備子会社」は
なぜ設立されるのでしょうか?

 

会社分割(新設分割)の制度自体は、
とくにこのような事業の移行先の箱となる会社がなくても、
新会社設立とともに事業を移行できる制度です。

それにもかかわらず、
わざわざ先に分割準備用の会社を作るのはなぜなのでしょうか??

 

それは、

———————————–
新設分割では、
「新会社設立=準備開始」
となり、実務的に大変
———————————–

だからだと思います。

 

私もちょうど今「新設分割」方式で
ホールディングス移行を進める支援をしていますが、

・預金口座は引き継げるのか?
・預金口座を新たに開設するのにタイムラグ出てしまうのではないか?
・社員の方の健康保険証が一時的に途絶えてしまうのではないか?
・労働保険の申告にどのような影響が出るのか?
・7月1日(休日)を設立日にしたいけど、新設分割では休日設立ができない
・許認可事業を移行する場合、どうしようか?

といったような諸々の対応に追われております・・・。

 

少しでも早く、
分割準備用に会社だけでも設立したうえで、
早めにできる手続きは実施したうえで、
事業移管ができれば実務現場としてはとても助かると思います。

 

ということで「新設分割」は、
シンプルな制度のように思えて、
実務上は意外と大変なのがネックと言えるでしょう。

 

今回の事例が「新設分割」を採用ということでしたので、
持株会社移行のスキームとあわせて、
分割準備子会社についても書いてみました。

 

★★★★★★★
会社分割の準備は
お早めに!
★★★★★★★

関連記事