※平成30年2月9日に株式会社トーシンより適時開示されている「会社分割による事業持株会社体制への移行および子会社(分割準備会社)設立に関するお知らせ」をもとに情報を整理しています。

内容

事業持株会社体制への移行

開示概要

●平成30年2月9日開催の取締役会において、
平成30年5月1日(予定)に会社分割による事業持株会社体制へ移行すること、
及び事業持株会社体制への移行準備を円滑に進めるため、
分割準備会社として100%出資子会社を設立することを決議した。

●なお、事業持株会社体制への移行については、
所管官公庁の許認可が必要な場合は許認可が得られることを条件に実施する。

事業持株会社体制への移行の背景

移動体通信関連事業をメインとして、不動産事業、
その他の事業として飲料水の販売、ゴルフレッスン施設、
太陽光発電事業、スマートフォン修理事業等を、
グループ会社においてリゾート事業としてゴルフ場の運営、
また不動産事業の一部に取り組んできた。

グループの成長実現のためには、
各事業の環境変化への迅速な対応を高めるとともに、
グループ全体の企業価値を最大化する経営体制を構築する必要があると考え、
事業持株会社への移行を検討することにした。

事業持株会社体制への移行の目的

①グループの経営体制の強化
事業持株会社体制への移行により、
移動体通信関連事業運営の自立性を進め、
これまで以上に外部環境の変化に迅速に対応できる体制を作り、
意思決定のスピードアップを図り、
グループ各社のグループ経営力を強化する仕組みを構築する。

②グループの事業執行体制の強化
移動体通信関連事業を含めた各事業会社は、
それぞれの事業における権限と責任のもとで各事業に専念することにより、
事業ごとの専門性を高め、またそれぞれの事業において特化した
専門的な人材の育成を進めることで
顧客ニーズに柔軟に対応できる事業執行体制を確立する。

移行方法

●具体的な移行スキームや事業持株会社体制移行後の体制については、今後
検討を重ね、取締役会での決議次第、適時開示していく。

事業持株会社体制への移行スケジュール(予定)

①平成30年2月9日:事業持株会社体制移行に関する取締役会決議
②平成30年3月初旬:吸収分割契約承認取締役会
③平成30年5月1日:事業持株会社体制への移行

 

Review

今回は「トーシン」の事例です。

まず同社のグループ経営の状況について、
確認をしてみたいと思います。

 

同社の連結子会社は2社で、
グループ会社数としては決して多くありません。

 

また、グループの業績と親会社の業績を見てみると、
以下のような感じです。

——————————————-
<グループ売上高>
2015年4月期:262億円
2016年4月期:261億円
2017年4月期:261億円

<親会社単体の売上高>
2015年4月期:249億円
2016年4月期:249億円
2017年4月期:249億円
——————————————-

驚くほどの安定感です…。

 

ただ、安定しているということは悪いことではない反面、
多くの上場会社が過去最高益を更新し続けている経済環境を考えると、
少し物足りない業績とも表現できます。

この状況は、経営者の立場としては、
まさに危機感を感じる安定感という感じなのかもしれません。

 

さらに、同社の2017年4月期の業績を
事業セグメントごとに確認してみると、

————————————————-
移動通信関連事業:売上高246億円 / 利益6億円
不動産事業   :売上高  3億円 / 利益1億円
リゾート事業  :売上高  12億円 / 利益1億円
————————————————-

となっています。

 

つまり、
メイン事業である「移動通信関連事業」が
グループ業績のほとんどを支えているという構図です。

 

このような事業構造のなか、
同社の有価証券報告書の「事業等のリスク」には
以下のような記載があります。

————————————-
①特定取引先への依存について
当社のおかれた経営環境は、移動体通信機器市場の成熟・競争激化により
一段と厳しさを増しており、主要な事業である移動体通信関連事業の手数料収入等が、
ソフトバンクモバイル株式会社及びKDDI株式会社の2社に依存しております。
そのため、各通信事業者の経営施策によっては、
予定した収益をあげられない可能性があります。

②通信事業者からの受取手数料について
当社グループは、通信事業者が提供する移動体通信サービスへの加入契約の
取次等を行うことにより、当該サービスを提供する事業者から
契約取次の対価として手数料を収受しております。
手数料収入の金額、支払対象期間、支払対象サービス、通話料金に対する割合等は、
各通信事業者との契約内容及び条件等に基づいております。
今後、通信事業者の事業方針の変更等により、大幅な取引条件の変更が生じた場合には
当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

③出店計画について
ソフトバンクショップ及びauショップの出店は、
ソフトバンクモバイル株式会社及びKDDI株式会社の戦略に基づいて決定しております。
出店の開設場所、規模、運営形態については、協議の上決定されることとなり、
各通信事業者の戦略及び方針によっては、
当社グループの業績に影響を受ける可能性があります。

④代理店契約について
当社グループは、ソフトバンクモバイル株式会社及びKDDI株式会社と
代理店契約を締結しております。
この代理店契約は、1年毎の自動更新であり、
受託業務の実績が一定期間を通じて著しく不振である等の理由により
中途解約も可能であることから、契約を解除されるリスクがあります。

⑤携帯番号継続利用制度について
平成18年10月24日から実施された
携帯番号継続利用制度(MNP=モバイル・ナンバー・ポータビリティ)により、
各通信事業者間の乗り換えが比較的容易となりましたが、
当社はソフトバンクモバイル株式会社及びKDDI株式会社の2社が主力であるため、
他の通信事業者への転出が高まった際は、
当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑥個人情報保護について
当社グループは、移動体通信関連事業、不動産事業、
リゾート事業の各事業活動で個人情報を取り扱っております。
不測の事態等により個人情報が流出等した場合、
当社グループの信頼性の失墜や損害賠償請求等により業績に
重大な影響を及ぼす可能性があります。

⑦不動産事業について
以下に揚げる事由により、予定した収益をあげられない可能性があります。
・景気について、当社想定外の経済情勢の変動。
・金利について、当社想定外の急激な金利上昇。
・季節について、物件引渡し時期の集中による四半期毎収益ボリュームの偏り。
・不動産法制等について、「金融商品取引法」「建築基準法」「都市計画法」等の大幅な変更。

⑧リゾート事業について
以下に揚げる事由により、予定した収益をあげられない可能性があります。
・景気について、当社想定外の経済情勢の変動。
・金利について、当社想定外の急激な金利上昇。
・季節について、当社想定外の気候の変化。

(※以上、同社の平成29年4月期の有価証券報告書より転載)
————————————-

 

いかがでしょうか?

ここでの記載のほとんどがメイン事業である
移動通信関連事業に関するものとなっています。

 

メイン事業である移動通信関連事業は、
他社2社(ソフトバンク、KDDI)の方針等に
大きく依存している事業と見受けられます。

自社でコントロールできない要素も多い事業が
メイン事業であることの危うさは
確かに経営者としては気が気ではないでしょう。

 

やはりメイン事業だけの一本足打法ではなく、
複数の事業の柱を構築しておきたいというのが、
普通の心理だと思います。

不動産事業やリゾート事業も
このような複数の事業の柱づくりのために
展開しているものと思います。

 

とはいえ、
同社における移動通信関連事業への高依存によるリスクは感じつつも
やはりメイン事業であり、会社の事業の柱であることは間違いありません。

メイン事業として安定成長していくことは不可欠です。

 

そのような背景もあり、
今回の同社の持株会社体制への移行ということなのだと思います。

持株会社移行の目的として以下の記載があります。

——————————————-
●事業持株会社体制への移行により、
 移動体通信関連事業運営の自立性を進め、
 これまで以上に外部環境の変化に迅速に対応できる体制を作り、
 意思決定のスピードアップを図り、
 グループ各社のグループ経営力を強化する仕組みを構築する。

移動体通信関連事業を含めた各事業会社は、
 それぞれの事業における権限と責任のもとで各事業に専念することにより、
 事業ごとの専門性を高め、またそれぞれの事業において特化した
 専門的な人材の育成を進めることで
 顧客ニーズに柔軟に対応できる事業執行体制を確立する。
——————————————-

 

なんとなくですが、
メイン事業である「移動通信関連事業」への危機感を感じつつ、
今後の事業発展への期待も込めて、
持株会社体制へ移行したように私は感じました。

移動通信関連事業は、
これまでの「親会社という立場」ではなく、
一事業子会社という位置づけで、
他の不動産事業、リゾート事業と並列な関係で、
取り組んでいくものと思われます。

 

★★★★★★★
メイン事業への危機感と
ホールディングス移行
★★★★★★★