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【事例】株式会社ルック

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※平成29年2月17日に株式会社ルックより適時開示されている「会社分割による持株会社体制への移行及び子会社(分割準備会社)の設立に関するお知らせ」をもとに情報を整理しています。

内容

持株会社体制への移行
分割準備会社の設立

開示概要

●平成29年2月17日開催の取締役会において、
平成30年1月1日(予定)を効力発生日として
会社分割方式による持株会社体制への移行をすること、
及び100%出資分割準備会社を設立することを決議。

●なお、持株会社体制への移行については、
平成29年3月30日開催予定の株主総会による承認
及び必要に応じ所管官公庁の許認可が得られることを前提に実施する。

持株会社体制移行の背景・目的

●アパレル・ファッション業界においては、
百貨店での衣料品販売の不振が続くなか、
全体としては厳しい環境が続いている。

●このような環境のなかで、
さらなる成長、より一層の経営に関する意思決定の迅速化を図り、
機動的かつ柔軟な経営判断を可能にするグループ運営体制を構築することを目指し、
持株会社体制へ移行する方針を決定。

●各事業会社の経営を有為な人材に担わせることで、
次世代の経営人材を育成するとともに、
グループの企業価値をさらに向上させるため、
新たな成長分野に対して積極的にグループ経営資源の配分を行っていく。

持株会社体制への移行方法

同社を分割会社とする会社分割(吸収分割)により、
分割する事業を100%子会社(分割準備会社)に承継させる予定。

持株会社体制への移行スケジュール(予定)

①分割準備会社設立承認取締役会:平成29年2月17日
②分割準備会社の設立:平成29年2月17日(予定)
③吸収分割契約承認取締役会:平成29年2月20日(予定)
④吸収分割契約締結:平成29年2月20日(予定)
⑤吸収分割契約承認定時株主総会:平成29年3月30日(予定)
⑥吸収分割の効力発生:平成30年1月1日(予定)

 

Review

今回は「ルック」の事例です。

同社はアパレル業界に属する会社となりますが、
同社の平成27年12月期有価証券報告書の
「事業の内容」のところに掲載されている図を確認すると、
以下のような感じになっています。


(※同社の平成27年12月期有価証券報告書より転載)

 

詳細はわかりませんが、
機能で言うと、仕入・製造工程から販売工程まで機能が
十数社のグループ会社で分業されていて、
業務が入り組んでいるように見えます。

 

同社が後日開示されている情報を見ると、
今回のホールディングス化の結果、
ホールディングカンパニーの有する機能は、
グループ経営管理機能に限定するとの内容がありました。

親会社で実施している本業の業務を分割準備子会社へ移し、
グループ経営管理機能だけをホールディングカンパニーに残すということです。

 

アパレル業界の場合には、複数ブランドを展開したり、
多店舗展開型になることが多いので、
・業務の標準化
・一元管理
といった「効率性」をグループ組織内でどこまで追求できるかが、
競争優位の源泉になるように個人的には思います。

 

そのため、
ホールディングカンパニーのグループ経営管理機能の役割として、
・グループ業務標準化
・グループデータの一元管理
等を強化できれば、とても理想的なような気がします。

 

ただ、アパレル業界を含む小売系の会社は、
アルバイト社員に頼ったビジネスになる傾向があり、
どうしても店舗の現場においては、
管理面や数値面が弱くなる傾向がある印象です。
(あくまで私のなかの経験によるイメージですが)

お店のことや、自社の商品ことは好きで興味があるけれど、
経営管理視点や数値・データとなると、
とたんに興味がなくなる社員も多いものです。

 

このような業界傾向は仕方ない側面もあるのですが、

—————————————
競争の激しい小売業界でこれから生き残っていくためには、
やはり数値や管理面にも強い現場を作ることができるかどうか、
—————————————

が1つのポイントになるような気がします。

 

自社の商品やお店のことも好きであるのは
ある意味、ビジネス上の最低条件ともいえ、
これだけで他社と差別化を図っていくには、
今の時代、厳しいような気がしますので。

 

今回のホールディングス化の目的の1つとして、
「次世代の経営人材育成」
ということがあげられています。

 

経営人材に求められる能力としては、
情熱や事業知識、コミュニケーション能力だけでなく、
数値やデータ管理も必須な能力と言えるでしょう。

どうしてもお店(≒現場)優先になりがちな小売業界において、
このような数値やデータ管理にも強い経営人材を1人でも多く育成できるかどうかは、
他社との差別化という意味では、とても重要なテーマだと思っています。

 

今回のホールディングス化の背景詳細はわかりませんが、
これからの厳しい時代に生き残っていくために、
グループ管理やグループ人材教育もしっかり強化していこう、
という意志の表れのように思いました。

私の好きな小売業界のホールディングス移行なので、
今後の動向も注視していきたいと思います。

★★★★★★★
経営人材を育成するために
ホールディングス化。
★★★★★★★

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