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【用語】会社分割②(諸論点)

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連結グループ経営を実践するうえで
社長にも知っておいていただきたい用語の解説です。

会社分割の諸論点・決定すべき事項

今回は前回の「【用語】会社分割①」の続きとして、
会社分割に関する諸論点を
簡単にまとめておきたいと思います。

<諸論点・決定事項>

①分割する対象の「事業」とその「権利義務」の範囲
②分割する際の「対価」をどうするか
③スケジュール(会社法)
④労働承継法
⑤その他

①分割する対象の事業とその権利義務の範囲

会社分割する際には、
移管する事業とそれ関する権利義務を
明確にするところがスタートです。

ここが全てのスタートになりますので、
あいまいにしておくと、
後でトラブルの原因になります。

 

具体的には、

—————————————————————–
・移管する事業の定義
・その事業に関連する権利(資産、契約、等)
・その事業に関連する義務(負債、契約、等)
といったものをリストアップする
—————————————————————–

ことから、進めることになると思います。

 

リストアップしたら、次に、
それらに関わる財務諸表数値を特定します。

たとえば、
「B/Sの資産のうち、この部分は分割対象になる」
「B/Sの負債のうち、この債務は分割対象に含める」
「P/Lの損益のうち、この部分の売上・費用は分割対象になる」
といった感じで、
具体的に直近の決算書を用いて、
線引きをする作業です。

このように
数字と具体的に紐付しようとすると、
あいまいな部分は、
少しずつ無くなっていくはずです。

社長としては、
上記のようなリストや数値をもって、
できるだけ「あいまいさ」が残らないように、
社内でコミュニケーションを実施し、
認識違いが生じないように心がけていただきたいと思います。

②分割する際の「対価」をどうするか

会社分割をするということは、
事業を別の会社へ移管することになります。

当然ですが、
重要な事業(≒会社財産)を移管する際には、
その分割対価として何らかの見返りを
受ける必要があります。
(「タダで財産をあげる」というわけではありません)

その対価として一般的に考えられるのが、

———————————————-
(1)移管先の会社の株式
(2)キャッシュ
———————————————-

の2つです。

上記の対価を会社で受け取るのか、
それとも株主として受け取るのか、
といった選択肢もあるのですが、
説明が複雑になるので、
今回は、この論点は省略したいと思います。

 

対価という点では、
一般的には、お金の移動が生じない、
「(1)移管先の会社の株式」
の方が多いと思います。

とくにグループ内組織再編であれば、
なおさらだと思いますが、
一応選択肢はありますので、
検討事項の1つとなります。

対価として「事業移管先の会社の株式」を
選択した場合には、
その会社の「株主」になることになります。

つまり、
「事業を譲渡した代わりに、その会社の株主になる」
という形になります。

③スケジュール(会社法)

スケジュールについては、
会社法できっちり決まりがあります。

また、原則として

————————————–
株主総会の承認決議
————————————–

が必要になります。

 

一方で、規模によっては、
株主総会を必要としない
簡易な「会社分割」の形態もあります。
(※「【用語】会社分割③(株主総会を要しないケース)」参照)

たとえグループ内の組織再編であっても、
このような会社法の規定に従って
進めていく必要がありますので、
このあたりは専門家にも確認をしながら
進めた方が無難です。

④労働承継手続

会社分割を実施すると、
包括的に事業を別法人へ
移すことができます。

その事業に関連する社員についても
当然、事業の構成要素として、
一緒に移管されます。

 

但し、社員にも当然「意思」があります。
会社の都合で勝手に
別会社へ異動してしまうことに、
異議がある社員がいても不思議ではありません。

そこで、会社分割をする際には、
労働者保護の重要性を考え、

—————————————————————-
・労働契約の承継に関して「労働者との事前協議」
・労働者への「通知」
—————————————————————-

が定められていて、
労働者に異議申出の機会を与える必要があります。

このようなことが規定されているのが、
「労働承継法」
であり、留意が必要です。

 

ただ実態としては、
このあたりの社員の処遇については、
意識し過ぎるほど意識されていると思いますので、
あとは法律に従って進めていくことの必要性についても
同時に意識していただく、ということだと思います。

社員との事前協議のスケジュール
通知のタイミング等についても、
定めがありますので要注意です。

⑤その他

その他留意すべき法律としては、
「独占禁止法」
「金融商品取引法」
といったものもありますが、
上場会社であったり、大規模な場合に
影響が生じる部分であるため、
ここでは説明を省略したいと思います。

また、
会社分割の過程では、
・債権者保護手続
・登記手続
といった点も必要になりますので、
上記「③スケジュール」のなかで、
あわせて検討しておく必要があります。

会社が決めること

いろいろと手続き面で
留意すべき事項はありますが、
基本的には、専門分野については
専門家の協力を得て進めていくことになると思います。

その際の「原則」は、
●意志(どの事業を、いつ、どのような形に、等):会社が明確にする
●手続き:専門家に任せる
といった役割分担になります。

つまり、

————————————————————–
・分割する対象の事業とその権利義務の範囲
・いつまでに実施したいのか
————————————————————–

の2点を明確にすることが、
経営者や会社の役割と言えます。

これさえ具体的になっていれば、
専門家もスムーズに作業を進めてくれるはずです。

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