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【知識】上場会社オーナーの資産管理会社の開示について

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前回の続き

前回の記事で、
【知識】「株式上場」と「連結決算の範囲」と「資産管理会社」
というテーマで書かせていただきましたが、
今回はその続きを書いてみたいと思います。

 

上場会社のオーナー個人の資産管理会社の位置づけが、
上場ルールのなかでどのように扱われるのか。

これから株式上場を目指すオーナーにとっても、
少し気になる部分もあるかもしれませんので。

 

非上場の親会社等の開示

東京証券取引所では、
親会社等をもつ上場会社に対し、
当該親会社等の「決算の内容」が定まったときは、
直ちにその内容を開示することを求めています。

 

ここでいうところの「親会社等」は
会計上の専門用語でいうと、
・親会社(概ね過半数を支配している会社)
・その他の関係会社(概ね20%以上を支配している会社)
となります。

つまり、
オーナーの資産管理会社といえども、
親会社としてみなされるものであれば、
決算内容の開示が公に必要になるということです。

 

具体的には、
———————————-
・資産管理会社の概要
・資産管理会社の株主は誰なのか
・資産管理会社の役員が誰なのか
・資産管理会社の財務諸表はどうなっているのか
———————————-

といったことを開示することになります。

 

ただ、ここで1つポイントがあります。

あくまで、この開示が求められる親会社等は
「会社」である場合に限るとされている点です。

 

資産管理会社は親会社になる?

資産管理会社は「法人(会社)」であるため、
仮に上場会社株式を過半数支配していたり、
一定の影響力を持つ程度(概ね20%以上)に株式を保有している場合には、
資産管理会社の決算内容等の開示が必要なのでしょうか?

 

この疑問に関して参考になる以下の規定があります。

「連結財務諸表における子会社及び関連会社の
 範囲の決定に関する監査上の留意点についてのQ&A」

この中の「Q10(2)」に以下のQ&Aがあります。

———————————————————————-
上場会社(上場準備会社)の役員(配偶者等含む)が
議決権のすべてを所有する会社(≒資産管理会社)が、
上場会社(上場準備会社)の議決権の過半数を有しているときには、
当該資産管理会社は上場会社(上場準備会社)の親会社に該当しますか?
———————————————————————-

 

この質問について
検討してみていただきたいのですが、
いかがでしょうか?

 

このQ&Aの解答としては、
以下のような感じで記載されています。

———————————————————————-
C社(資産管理会社)は、
P社(上場会社・上場準備会社)の議決権の過半数を所有しているため、
基本的にはP社(上場会社・上場準備会社)の意思決定機関を
支配しているものと考えられます。

しかしながら、C社(資産管理会社)が
役員X(配偶者等が議決権を所有している場合を含む。)の
個人的な財産管理会社であり、
C社(資産管理会社)がP社(上場会社・上場準備会社)を
支配している実態はないと監査上判断できる場合には、
P社(上場会社・上場準備会社)は
C社(資産管理会社)によって支配されているのではなく、
役員Xによって実質的に支配されているものと考え、
例外的に、C社(資産管理会社)は
P社(上場会社・上場準備会社)の親会社に該当しないものと
判断することが認められると考えられます。
———————————————————————-

 

つまり、
資産管理会社が、オーナーの個人的な財産管理を目的とした会社で、
上場会社(上場準備会社)を支配している実態がないと判断できる場合には、

—————————————-
資産管理会社 ≒ オーナー「個人」
—————————————-

という理解のもと、
上場会社(上場準備会社)の親会社にならない、
ということです。

 

この規定を前提に考えると、
オーナー個人の資産管理会社が
純粋に個人資産管理だけを目的にしているかどうか、
といった点が焦点になりそうです。

オーナーの個人資産管理だけをしている会社であれば、
法人ではなくオーナー個人と同等とみなされ、
一方で、資産管理会社といっても
オーナーの資産管理以外の事業も実施しているような場合には、
いわゆる「法人」扱いとされ、
資産管理会社といえども「親会社」に該当する、
ということになります。

 

例外について

ちなみに、規定では以下のような場合には、
親会社等の決算内容の開示は不要とされています。

————————————————
①「親会社等」の株券等が国内の金融商品取引所に上場している場合
②「親会社等」の株券等が外国金融商品取引所等で、
 上場もしくは継続的に取引されている場合
③「親会社等」と上場会社との事業上の関係が希薄であり、
 上場会社が「親会社等」の決算の内容を把握することが困難であると取引所が認めた場合
④その他取引所が適当と認めた場合
————————————————

 

上記のうち①②は、
親会社等が上場会社である場合(⇒親子上場のケース)ですので、
当然にすでに親会社等の情報は開示されているため
例外として挙げられているということです。

 

そして、
上場会社オーナーの資産管理会社について考える場合は、
どちらかというと③④になると思います。

上場オーナーの資産管理会社が
オーナー個人の資産管理だけを純粋に目的とする場合には、
オーナーから情報を提供してもらえない場合も考えられますので、
上記の③に該当する可能性があります。

また、
上場オーナーの資産管理会社が
オーナー個人の資産管理だけを純粋に目的とする場合には、
法人ではなく、オーナー個人と一体と考えられ、
開示不要ということであれば上記の④に該当すると言えるのではないでしょうか。

 

おそらくですが上記③④は、
さきほどの「Q10(2)」の論点を意識したものと思われます。

 

まとめ

ということで、
上場会社株式の一定割合を保有する
オーナーの資産管理会社についてのテーマをまとめますと、
以下のような感じになると思います。

 

————————————————————————-
●概ね20%程度以上の上場会社株式を保有するオーナーの資産管理会社で、
 オーナーの個人資産管理だけをしている会社とは認められない場合

 ⇒資産管理会社の決算内容等の開示が必要になる

 

●概ね20%程度以上の上場会社株式を保有するオーナーの資産管理会社で、
 オーナーの個人資産管理だけをしている会社の場合

 ⇒資産管理会社の決算内容等の開示は不要
  (法人ではなく、オーナー個人と一体であるという位置づけ)

 

●概ね20%程度未満しか
 上場会社株式を保有していないオーナーの資産管理会社の場合

 ⇒開示基準に満たないので資産管理会社の決算内容等の開示は不要
————————————————————————-

 

今回の内容は少しマニアックな感じなってしまいました…。

私見の部分もありますが、
これまで私が直面してきた事例も含め、
まとめさせていただきました。

 

★★★★★★★
上場オーナーは
開示される情報が多い?
★★★★★★★

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