連結グループ経営を実践するうえで
社長にも知っておいていただきたい用語の解説です。
はじめに
最近は中小企業でも
海外展開をしてく会社が増えてきました。
今後もこの流れは続くと思いますが、
それと同時に、
海外展開に絡む税務トラブルが増えています。
税務トラブルといっても
いろいろな種類のものがありますが、
そのなかの1つとして、
今回は「移転価格税制」という税金に関するテーマについて
簡単に要点をお伝えしたいと思います。
海外へグループ会社展開していく経営者であれば、
是非押さえておいていただきたい論点です。
グループ内取引価格について
グループ企業間で取引を行う際には、
グループ企業間で取引価格を決めることになります。
つまり価格の決定権が
グループ内にあることになります。
基本的には企業は
自由に価格を決めることができるはずですが、
これを無放置にすると、
グループ企業を使い、不当な価格設定をして、
グループ会社間で
利益移転をすることができてしまいます。
たとえば、
一般的には100円の商品を、
グループ会社には30円で販売するような場合。
このようなことが自由にできてしまうと、
グループ会社間で自由に利益を調整できてしまいます。
そこで、税法では、
グループ会社間といえでも、
客観的に正当な金額での取引を要求されます。
国をまたぐ場合は?
それでは、
日本のグループ会社と
国外のグループ会社との間の取引の場合には、
どうなるでしょうか?
日本内のグループ会社同士の取引同様に
取引価格の制約があるのでしょうか?
ここでも、基本的には同じ理屈になります。
たとえば、
日本の親会社から中国の子会社へ
商品を販売する場合の取引価格の場合、
「国内であれば100円で売るものを
中国の子会社へ30円で売ってはダメ」
ということです。
移転価格とは?
このように海外のグループ会社との
取引価格について関連してくる概念が
「移転価格」
という論点です。
この「移転価格」を簡単に表現すると、
「本来国内で100円で売るような商品であれば、
海外に売るときも100円で売りましょう」
「もし100円より低い価格で販売したら、
正当な価格である100円を販売価格としてみなして
税金の計算をします」
ということです。
上記のケースでは、
70円(=100円-30円)が
不当に安く売価設定しているということになります。
もともと原価が20円だったとすると、
これを30円で販売すれば、
利益は10円になります。
この利益10円に対して、
日本の法人では法人税がかかってきます。
一方で、
移転価格税制が適用されると、
「この30円の売価は正しくないから、
売価は100円とみなして税金計算をします」
とされて、
税金計算のときだけ、
売価が100円とみなされてしまいます。
あくまで実態の取引価格は変わりません。
税金計算のときだけ利益としてみなされ、
税金が増えてしまうということです。
つまり、
売上:30円
原価:20円
利益:10円
だとすると、
通常の法人税はだいたい4円くらいになるはずです。
(利益10円×40%=4円)
一方で、
この状況が移転価格税制にひっかかってしまうと、
税金が32円と計算されてしまいます。
<計算式>
実質売上:100円
原価:20円
実質利益:80円
※法人税=80円×40%=32円
実際の売価は30円と変わりませんが、
税金計算のときだけ売価100円とみなされて計算されるので、
相当不利な状況になってしまいます。
海外子会社との取引価格には要注意
海外との取引については、
語り尽くせないほどいろいろな論点がありますが、
とても複雑になるので、
今回はまず「移転価格」という表現だけでも
覚えておいていただきたいと思います。
国をまたぐケース(クロスボーダー)の場合には、
国内のグループ会社以上に、
取引価格に注意をした方が良いです。
最近では海外との取引がとても注目されています。
なぜかというと、
税率の高い日本に利益を残さず、
税率の低い海外子会社に利益を移転する事例が
増えているからです。
先程の例のように、
海外子会社への販売価格を下げれば、
自然と日本の会社の利益が圧縮され、
日本の法人税が減少してしまいます。
税収が減ってしまう日本としては、
この状況を放置しておくことは死活問題であり、
このような状況は見逃せません。
日本としては、
海外に利益移転しないように、
細心の注意を払って監視をするような体制に
なってきているということです。