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Vol.201 赤字子会社への貸付けは合理的に行われていますか?

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赤字子会社への貸付

グループ経営を進めていく中では、
どうしても赤字子会社は存在は避けられません。

一時的であったとしても、
赤字の時期というものがあったりするものです。

 

そして、どうしても発生する問題は、
「赤字子会社への貸付」
に関する問題です。

 

最初のうちは、
「いくら貸し付ける必要があるのか?」
「どれくらいの回収期間にしたらよいか?」
「利率はいくらなら妥当か?」
といった程度の検討でスタートします。

 

但し、多くの場合では、
この最初の貸付けで資金問題が解決するケースは少なく、
その後追加融資が必要な状況がやってきます。

また、状況によっては、
増資で資金を投入するケースもあると思います。

 

個人的には、このあたりからが、
赤字子会社とどのように接していくべきかについて
本当の意味で悩み始めるステージになるように思います。

 

赤字子会社への貸付

グループ資金が最適運用・活用されるように
グループ全体最適の視点でグループ資金の管理を行うのが
グループ経営の理想ではないでしょうか。

 

「グループ・キャッシュ・マネジメント」

とても響きの良い用語ですが、
実は、赤字子会社が増えれば増えるほど、
この「グループ・キャッシュ・マネジメント」の理想は、
崩れていく印象があります。

なぜなら、
グループ最適な資金管理の考え方も
赤字子会社が存在するだけで、
合理的な判断ではなく、
感情で判断される局面が増えていく傾向が強いからです。

 

とくに赤字子会社へ、
「追加」で資金投入が必要になってくる段階では、
客観的かつ合理的な判断はますます見られなくなります。

 

資金が足りなくなった子会社としては、
親会社に頼るのは自然な流れかもしれません。

一方で、
親会社では、赤字子会社の状況を冷静に判断した結果、
「資金の追加投入を実施しない」
という合理的な選択肢も当然あるはずですが、
実際には、そのような決断がなされないケースが
多いのではないでしょうか。

 

このように合理的とは言い難い判断が
「グループ経営の良さ」と言える側面もありますが、
どちらかというと「グループ経営によるデメリット」になるケースの方が
多いような気がします。

そして一度、合理性を欠く判断が行われると、
ここから先は、ますます合理的な判断をしていくのが難しくなります。

最初に投資する時は
専門家にDDを依頼したりして、
かなり慎重に判断する一方で、
それ以降の追加資金投入の段階では、
意外と緩い判断になっていくケースが多いということです。

 

ここには、いわゆる

——————
「損切り」の難しさ
——————

という「感情」的側面が、
大きく影響していると思っています。

損が膨らめば膨らむほど
損切りや撤退は難しくなるからです。

 

子会社側の意識

親会社が判断に苦しみながら
追加で資金援助をしている一方で、
残念ながら、その思いが、
子会社側へは届いていないケースも多いものです。

子会社が親会社から資金を追加で援助してもらうためには、
親会社からいろいろと注文や要求は受けるとは思いますが、
それでも、グループ会社ということもあり、
意外と親会社からのプレッシャーは大きくないものです。

 

結局は、

———————–
貸さざるを得ない関係
———————–

が存在しているためでしょう。

 

その結果、子会社側からすると、
徐々に、追加で資金を借りたり、増資をしてもらえることが
当たり前な感覚になっていきます。

このことは、
「子会社側の危機感の欠如」
という問題にもつながっていきます。

 

私自身、いろいろな会社を見てきましたが、
この状況は結構共通して起きている状況だと思います。

 

そして、感じることがあります。

それは、

————————————–
赤字子会社への資金投入はきちんと上限を決めておいて、
それ以上は外部金融機関から借り入れるしかない、
といったようなルールを徹底するべきなのではないか?
————————————–

という思いです。

 

このようなドライな対応の方が、
結果的には、親子が健全な関係になったり、
赤字子会社の意識改革になるような気がします。

外部金融機関からの借入となると、
当然、親会社の保証を要求されるとは思いますし、
断られるケースもあると思います。

 

それでも、

————————————–
ある一定ライン以上の借入については、
まずは赤字子会社側の方で、
外部借入前提で実際に動いてもらう、
という厳しいルールの方が、
お互いに良い方向に行くのではないか
————————————–

————————————–
グループ内資金を活用した方が、
グループ外部流出を抑えられるというメリットはありますが、
それによるデメリットの方がはるかに大きいのではないか
————————————–

といったようなことを思うのです。

 

グループ外にある「現実の厳しさ」を子会社側が肌で感じることで、
親会社からお金を融通してもらえることの有難さを実感できるはずですし、
危機感を実感してもらえると思います。

だからこそ、
親会社だから当然に子会社へ貸し付ける、
という状況は作らない方が良い気がするのです。

 

まとめ

お金は無限だと思うと
意外と無駄遣いしてしまうものですし、
有難さを感じられないものです。

有限だからこそ、知恵を使い、努力をして
良い結果が生み出されるはずです。

 

ということで、

————————–
グループ会社間だからこそ
お金の貸し借りについて
緊張感を維持する仕組みを設けておく
————————–

ということが重要なのではないか、
と思っています。

 

「お金が有限であることを感じてもらう仕組み」

これをグループ経営のなかでも
きちんと組み込んでおくことが必要だと思うのです。

 

赤字子会社への資金投入は
とても悩ましい問題ですが、
グループ経営をしていくうえでは、
避けて通れないテーマでもあります。

お金を稼いでくれている
頑張っている現場があるはずなので、
そのお金をグループ内で有効に使うような仕組みを
グループ経営者として構築しておきたいものです。

★★★★★★★
グループ内のお金の貸し借りが
ルーズになっていませんか?
★★★★★★★

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